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第1話 目覚め
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グレー・ワールド
第1話 目覚め
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「でねー…」
「あれ?」
「あそこにいるのあなたの友達じゃない?」
「本当だ。」
「ごめん、先に行ってて。」
「あ、そう。じゃあね。」
「ウィスティ。」
「傘もささないで、風邪引いたらどうするの。」
(…!)
「大丈夫?怪我はしてない?」
(うん、大丈夫…)
あせ あせ
(私は平気だから心配しないで。)
「どうしたの?今日はなんか変じゃない。」
(…。)
(…帰って。)
「え?」
「でも…」
(お願いだから。)
「わ…わかった。」
「!」
「そんな!」
「う…」
「う…」
ゴオオオオオオオオオ
バン!!
ゴロゴロ
「う…」
(ここはどこだろ?)
(そうか…。私は死んだんだ。)
「!?」
「あなたは誰?」
「……腕を見せて。」
「…!」
「………。」
ピタッ
「傷だらけ…。」
「教えて。私は死んだの?」
「……いいえ。あなたは生きてる。」
「あなたはまだ生きなければならない。」
「嫌だ、そんなの。」
「お願い、このまま死なせて…。」
「沢山あったんだね。辛い事、苦しい事が。」
「…。」
「全て忘れればいい。家族のことも、友達のことも、何もかも…。」
「うう…」
「全て忘れなさい。時が来るまでは。その時が来るまで…」
「ぐ…」
(あなたは一体誰なの…。)
「おやすみ。」
グレー・ワールド
第1話 目覚め
猫分儀スミレ
Nekobungi Sumire
「起きて。」
「起きてください。」
「う…ん…」
「船は港に着きましたよ。降りて下さい。」
「おお、そうじゃ。お嬢ちゃんはここで降りるんじゃったな。」
「ほれ、早く行かんと船が出ちまうよ。」
「???」
「クネノマヤ港 クネノマヤ港に着きました」
「お降りの方はお早めにお願いいたします」
(ここ、どこだろう?)
「船は出港します!」
「お早めにご乗船下さい!」
(私、なんでここにいるのかな。)
キョロ キョロ
(あれ…あの人、どこかで見たことあるような…)
「ウィスティ様!お久しぶりです!」
がしっ
「うぐっ!」
「あ、驚かしてしまってすいません。つい嬉しくって…」
「??」
「まぁ、立ち話も何ですから行きましょう!」
「ちょ、ちょっと待って!」
「へ?」
「私、あなたが誰なのか知らないんですけど!」
「知らない?」
「それに、ここがどこなのかもわかんないし…」
「ここはクネノマヤの国じゃないですか。」
「クネ…何?」
「ウィスティ様の国ですよ!」
「ウィスティ様…って誰?」
「もしかして、何も覚えていないんですか?自分の名前すら?」
「えっ?」
ドキッ
(名前…そう言えば、私の名前…何て名前だっけ…)
「長い旅でしたから…こんな事もあるのかも…う〜ん。」
「……」
がしっ
「でも大丈夫!私が全部わかってますから!」
「ひっ!」
「あなたはクネノマヤ国王の娘にして後継者、ウィスティ王女様です!」
「えええっ!?」
「え、え…」
「ちょ、ちょっと待ってよ。」
「クネ…とかなんとか、何わけのわかんない事言ってるんですか!」
「ウィスティ様」
「私、あなたの事信じないから!」
「でも…。」
「…わかりました。」
(私は、どうしようかな…。)
ゴオ
「!」
ビュウウウウウウ
ガタ ガタ ガタ
ガタ ガタ
(寒い…。)
「あなた!」
「!!」
ゼエ ゼエ
「私、やっぱりあなたについてく。」
「ウィスティ様。」
「よろしくおねがいいたします。」
「ご心配されなくても、わからないことがあれば私がお教えしますから。」
「あ、ありがとう。」
くるっ
「自己紹介を忘れていました…私は親衛隊長のメリッサです。」
「身の回りの面倒な事は全部私にお任せ下さい。」
「はあ…」
「彼らは?」
「ああ、彼らはただのコスプレマニアですよ」
「王女と言っても、今は大した力もなくて…親衛隊も私一人だけです。」
「そうなんだ。」
「でも大丈夫!私一人でもしっかりウィスティ様を守ってみせます。」
(私、この人のこと信じていいのかな…)
(どこかで会った気がするのは確かなんだけどな…)
(どうして忘れちゃったんだろう…)
「あ、ほらほら見えてきましたよ!」
「ウィスティ様、ようこそクネノマヤの街へ!」
「じゃ、私たちはこれで。」
「また!」
「迷子にならないようにしっかり付いて来て下さいね。」
「は、はい!」
「鉱物・標本はタラバのお店!」
「ロワダアの美味しい野菜はいかがですかー!」
「ウスライズ!安いよ安いよ!」
「卵ー!卵なら卵屋ミニロオケ!」
「新鮮な紅マグロ!今が旬だよー!」
「メリッサ、待って!」
「ウィスティ様、こっちですよ。」
(見たことない果物だ…)
「この辺りは街の中心でして。お店も多くてにぎやかでしょう。」
(こっちは花屋さんだ。)
(ここは何を売ってるんだろう?)
「あ、本屋さんがある!」
「ウィスティ様は本がお好きなんですか?」
「う、うん。たぶんそうだったと思う…」
「後で寄ってみましょうね。でもまず、お屋敷にご案内します。」
「屋敷?」
「以前、ウィスティ様とご両親様がお住まいになっていた場所です。」
「そんな所があるんだ。」
「急いで行きましょう。ささ、こっちですよ。」
「う、うん。」
(あれ?)
たたた
「ウィスティ様、だめですよ!」
「え?」
「早くこちらへ!」
「?」
「?」
「ウィスティ様、あれは「開かずの扉」です。」
「「開かずの扉」?」
「ええ。決して触れてはならない扉とされています。開あけることは出来ません。」
「ウィスティ様もあそこへは近寄らないで下さいね。さあ、もうすぐ着きますよ。」
「ごめんなさい…」
「これ…」
「何にも…ないじゃない」
「ええ…実はウィスティ様がお留守の間に屋敷が壊されてしまって。」
「それをこれから復元していただきます。局長さん!」
「復元?」
「ども」
「「呪文局」局長のガネジリです。」
「は、初めまして。」
(小さい)
「さぁ、いよいよ始めますよ。こちらにどうぞ。」
「ねぇ、何が始まるの?」
「さて、今からウィスティ様にやっていただくのは「設計詩面」の読み上げです。」
「「設計詩面」」
「ええ。」
「他の人が読んだのでは何にもならないからねぇ。」
「?」
「こちらが」
「ウィスティ様の屋敷の設計詩面です。」
「一字一句間違いなく読んで下さいね。」
「それでは録音開始します。」
(見たことない文字だ…)
「リバティノモニマサザフイリカイ…」
(あれ、読める。)
「ノマツトココイ・ウヤレイエコム」
「ナデエコ、リソハニカ、カシイラアセス…」
ヒュウウウ…
「うまくいくかなぁ。」
「え?」
「何か問題でも?」
「いや、実は…」
「記憶喪失!?」
「うん。」
「内容を正確に発音さえ出来れば問題はないはずですが…」
(細かい情報が欠如するかもしれないな…)
「ふう」
「おや、終わりましたか。」
「デオコロ君、殿下の声列は正確かね?」
「はい、とても正確ですよ。これなら問題ないでしょう。」
「よろしい。次は私の番ですね。」
「内務省呪文局長の権限により音声列から物質生成を行う。キロク・トホナマロコテオ!」
「再生開始!」
「よし!」
ガチャ ガチャ
「あれ、ヒモみたいなものが…」
「これ、さっき私が読んだ言葉だ!」
「ウィスティ様、しっかり見ていて下さいよ!」
(わあ)
(文字が集まって…)
(大きな形を作っていく。)
「よし、固形化開始!」
バチ
「あ」
バチ バチ バチ
「ウィスティ様が読まれた設計詩面の言葉」
「その一つ一つに編み込まれた「記憶」が音を通じて広がり…」
「空間上にその形が復元されるのです。」
「すごい!」
「やった、成功ね!」
「さあ、あなたの家ですよ。」
「う、うん。」
ガチャ…
「さっきまで何にもなかったのに…信じられない!」
「うふふ。」
「メリッサ、あれは何?」
「?」
「空の額縁が2枚ある。」
「絵が復元されてない…」
「ごめんなさい…。」
「いえ、いいんです。また描き直せばいいんですから。」
「ここには何の絵があったの?」
「あなたのお父様とお母様の肖像画…。」
「ウィスティ様の記憶喪失と何か関係あるのかもしれませんね。」
「…………。」
「ガネジリさんも来ればよかったのに。」
「あの人は仕事で忙しくしてるのが好きなんですよ。」
「わぁ、すごく綺麗!」
「この街の夜景は世界一なんですよ!」
「ふーん…。」
「ねぇ、メリッサ。」
「はい?」
「あなたはなんで…その…私の家来になったの?」
「さぁ…昔から決まっていたことですから。」
「決まっていたこと?」
「そうです。ウィスティ様をお守りするのが私の役目。」
「あなたが私を信じてくださる限り、私は力を発揮出来ます。」
「信じる限り?」
「ウィスティ様は、私を信じてくれますか?」
「え…」
(そうだ、メリッサは私が昔から知ってる人だ。)
(思い出せないけど、それだけは確かだ…。)
「うん、あなたを信じる。」
「では、私はずっとあなたのおそばに。」
「よろしくね、メリッサ。」
「ここはどこだろう?」
「メリッサ?」
「メリッサ?」
「ニャハハハ!」
「!」
「あなた、誰?」
「オレが誰か?そんな事はどうでもいいのニャ。」
「お前はウィスティだニャ?お前の秘密を知ってるニャ。」
「私の秘密?」
「そうニャ。」
「お前があの日、何をしたのか…」
「あの雨の日に…」
はっ
「サラバ!」
「あ、待って!」
「あなたは一体誰なの?」
(『開かずの扉』だ。)
(あ、開けた!)
ゴオオオオオオオオ
「う…」
「う…」
「う…。」
「イヤ…寒い…」
「だめ…」
「やめて!」
「来ないで!!イヤ───!!」
「ウィスティ様!」
「どうなさいました?うなされていましたよ。」
「夢を見た…」
「とても怖い夢…。」
「ただの夢です、ウィスティ様。」
「大丈夫……私がおそばにおります。」
「メリッサ…。」
(あれ、そういえば…)
「?」
(私が持ってたバッグ…。)
(何が入ってるんだろう?)
(アルバムだ…)
(空っぽ…)
「それ、何ですか?」
「よくわからない…。」
(なんでこんなもの持ってたのかな…。)
「ウィスティ様、もう寝ませんと。」
「う、うん。」
「おやすみなさい、ウィスティ様。」
「おやすみなさい、メリッサ。」
(…あの扉の向こうには何があるんだろう?)
(私はこれからどうなるんだろう…)
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