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グレー・ワールド
第7話 算譜
猫分儀スミレ
Nekobungi Sumire
「……やっと見つけた。」
ババッ
(…………)
「オーッすごい!」
「迷宮の中だ!」
「どんな場所にもワープ出来るのですか。」
「行ったことある所ならね。」
「よぅ…随分早いな。」
「何してた?」
「さぁ、探検の再開です!」
「ウィスティ様…そこに何が?」
「扉……」
(らっ)
(ここには、あの怪物が封印されていた……)
(この下にあるのは、ひょっとしてもっと…)
くっ
バンッ!!
「!」
「開いた!」
「…さぁ、地獄の扉が開きましたな。」
「は……入っても大丈夫なんだろうな?」
「はは、怖いかい?ジョセ。」
「ふん。バケモノの一匹や二匹、平気さ。どっかのトンマが足手まといにならなきゃな。」
「あ、ほらほら!すぐそこに次の部屋が見えますよ!」
ガシャッ
「あ」
「あ」
「こ、これは…」
「一体…?」
「"柱"ですよ!これが"柱"なんですよ!」
「え、柱って…」
「これがですか!?」
「ゴーグルを……教授、見えますか」
「ああ。」
「地下深くから地上にまで達し、クネノマヤの街を支える大黒柱!」
「この街のパワーの源!伝説の柱の部屋に、我々は来ているのです!」
「それって、ただのおとぎ話じゃないの?」
「いいや、実在したのだ!さもなくば、どうして我々クネノマヤ人が存在出来たろう?」
「街の、いやこの国の根底が…」
「ただの記憶じゃない…これはウィスティの意識のコアだ…!」
「なぜそんなものが見えるのですか?」
「これは鏡のようなものだ。あらゆる領域に到達する意識のハードリンク…」
「全てを支える…!」
「全てに繋がる…!」
「ピッ」
バン
「!?」
「何だ?」
ユン ユン ユン
「あれは…?スプライトか?」
「お前は誰だ!」
スル スル
「……はじめまして、EREBOS研究チームのみなさん」
「スプライトではありません人間ですよ。」
「私の名前はスサノー。」
「スサノー?あのスサノーか?」
「知ってるの?」
「有名なクラッカーさ。あちこちを荒らし回ってる大悪党だよ。」
「大悪党とは人聞きの悪い。」
「スサノー、君は一体どうやってここに来たんだ?」
「ちょっと割り込ませてもらっただけですよ。EREBOSの回線に。」
「とても簡単でしたよ。」
「だが、この場所に来るのは不可能なはずだ!たとえコンピュータに侵入出来ても、意識空間の中までは…」
「その通り!」
「意識空間への侵入は不可能だ。内側から細工をしなけりゃ、な。」
「!」
「貴様、初めからこのために…」
「おっと、動かない方が身のためだぞ。」
「む…」
チャッ
「銃だって?そんなハッタリに、誰が…」
ダーン
ドタッ
「キャッ」
「!」
「意識空間で機能する銃も作れるのですよ。君の知識では剣やナイフが限度でしょうがね。」
「これは夢だ…身体の怪我など何でもない。」
「だが頭を撃ち抜かれれば…どうなるかわかるな、先生。」
「……。」
「私たちの目的はお察しの通りです。」
「EREBOSを奪い取るために参上しました。」
「たとえウィスティを殺しても、所有権はお前には渡らないぞ!」
「まさか!そんな野蛮なことはいたしません。」
「我々はあくまで平和的に交渉をしたい。例えば…」
「ミス・マクロード。君に、EREBOS所有権を譲渡する契約書にサインしていただくとか。」
「わた…」
「彼女はそんな事するもんか!」
「そうかもしれませんね。でも、彼女の気が変わらないとも限りませんよ。」
「それは?」
(巻物…?)
「教授、あなたが最も恐れていたものですよ。」
「あなたたちが作った剣やロボット、私の銃と同じ。"プログラム"です。これは一種のコンピュータウイルス…」
「……!」
「EREBOSは偉大な発明ですね。脳と脳、脳とコンピュータ。それらを繋げることが出来る。」
「意識を、プログラムが走る。まさに夢の世界です。」
「…まさか。」
「書いたものを動かせる場所でさえあれば…。私は何でも出来る。」
「私が自由に出来る領域。遂に、人の心がそれに仲間入りするのです。」
「…破壊も改造も思いのまま。」
「この私が!」
「人類の心!意識!意思や感情までもを支配するのです!」
ポカーン
「だが、そのためにはあなたたちのマシンが必要なのです。」
「ミス・マクロード、君自身がEREBOSに接続されたのが運の尽きです。」
「あなたの脳を弄らせていただきますよ。この"柱"を使ってね。」
「!!」
「なぁに、いらない部分を消してちょっと書き直すだけですよ。」
「君は君自身の意思で権利譲渡の契約書にサインすることになる。」
「私は平和的かつ合法的にEREBOSを手に入れるのです!」
「ウィスティ自身の意思だって!」
「そんなものは、もう本人の意志とは……」
「なら、裁判所に訴えますか?脳がハッキングされたって?」
「笑い飛ばされるのがオチでしょうね。EREBOSの存在自体、世間には秘密。そうですよね?教授。」
「………。」
「さぁ、魔法のショーの始まりだ!」
パシュッ
「まずはミス・マクロード…君を私の物にする!」
くる くる くる くる
バッ バババ
バリ バリ バリ バリ
「あ……う……」
「でっ、殿下!」
「わっはっはっは!」
ビリ ビリ ビリ
ゴウ
「…えっ?」
バンッ バンッ バンッ
「ハッ!」
「こいつ!」
バッ
「わぁ!」
ガシッ
「やめろ、触るな!」
「うりゃ!」
ガギッ
「!!」
ビキ ビキ ビキ
カッ
バンッ
「ひっ」
「!」
ドッ
「ぐあっ!」
「ウィスティ様!」
「ピッ」
「バキ バキ」
「バキッ」
バリーン
ゴオオオオオ
「わーっ」
ゴオオオオオ
「!」
「危ない!」
「あ……アミトエナ!」
ギリ ギリ ギリ
「収まった…?」
「穴が…」
ババッ
「!」
「よ、よくも計画を台無しにしてくれたね。次はこうはいかんぞ!」
「この野郎!」
シュン
「そ、そんな…」
「メリッサ?」
「メリッサ?」
ゴン ゴン
(うげぇ…)
「エドワード。メリッサは……」
「ええ、わかってます……」
「だからあれほどビーコンを増やせと言ったんだ!」
「仕方ないでしょう!」
「何もかも不安定な環境で簡単にバランスを変えるわけにいかないんです!」
「あ、あの…」
「だいたい、教授があんな男を入れなければこんな事には…」
「お前だって反対せんかったろうが!」
「やめて…」
「やめて!」
「メリッサは、メリッサはどうなったんですか!?」
「……」
「……」
「わからない…彼女の位置を見失ってしまったんだ。」
「じゃあ、またあの機械を使って探しに行けば…」
「あれは行ったことのある場所にしかワープ出来ないのだ。」
「メリッサは発信機を持ってなかったから…」
「一人で未知の領域に迷い込んでしまった以上は…」
「私たちの力では、もはやどうすることも………」
「……」
「メリッサ!さっきあなた、「アミトエナ」って言ったよね?」
「え、あ…」
「この床の下がどこなのか知ってるのね?」
「……はい、この下に見えたのは…アミトエナの国でした。」
「私をそこに連れて行って!」
「ダメです!あんな危険な所に殿下をお連れするなど…」
「前に話したろう…アミトエナはクネノマヤの敵国なんだよ。」
「アミトエナ人に捕まったら殺されますぞ。」
「私の大事な友達が、その危険な所にいるの!」
「お願いメリッサ、アミトエナに行く方法を教えて!」
「……」
「…わかりました。ただし、我々がお供いたします。」
「秘密の入り口があります。」
「まずは向かいましょう!「死の谷」へ!」
「ウィスティ様、これが「言の葉の器」です。」
「アミトエナへワープするための呪文が封入されています。」
「そしてこれが、クネノマヤ聖剣です。」
「大地に突き刺せば、そこにクネノマヤへの帰り道が現れます。」
(……。)
「くれぐれも無くさぬよう。」
「教授、必ずメリッサを見つけてきて下さい。」
「うむ。」
「心配するな、殿下は俺たちが守る。」
「ああ……。」
「今回、行けるのは五名だけです。」
「帰りは六人。全員揃っての生還を祈りましょう。それでは開きます!」
「バシッ」
カシャ
ビュウウウウウウ
ドドドドドド
バシュッ
つづく
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