全8章 R-12 2011-2016 完結済

アリス・シャーロック:ルビー色の星雲

第2章 箱の中の証拠品

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​CHAPITRE II

​“LA PREUVE DANS LE COFFRET”

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​最新ニュース

​正体不明の怪盗、
ロンドンに出現

​サザーク区にある博物館宛に犯行予告を出していた連続窃盗犯が、予告通り昨

​博物館の展示品
昨夜盗み出される

​ティラミス恐竜博物館で展示中の美術工芸品、ウルフォーゲルのオ

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​中央ロンドンの橋上で火災発生

​交通大混乱 立ち往生する通勤客

​ロンドン消防本部は今朝、昨夜未明に市内で大規模な火災が発生したと発表

​ヘッドライン

​NEWS

​アーセニウスとは
何者なのか?

​最近サザークの博物館に届けられた犯行声明文。その送り主と見られる

​首都警察、またもや
アーセニウスの逮捕に失敗

​首都警察局は緊急記者会見を開き、本日未明に発生したウルフォーゲルのオーブ

​盗難事件について発表を行った。グ

​厳戒態勢の中、堂々と盗みを敢行

​スコットランドヤードの無力さが
またしても露呈

​ウルフォーゲルのオーブ盗難事件
なぜ防げなかったのか

​ウルフォーゲルのオーブは今どこに?

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​はぁ……。

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​………え?

​うわぁ!

​あ、あなた無礼ですよ!

​突然そんな……

​………?

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​寝ぼけてるだけ……なの?

​何事ですか!

​あっ!

​な、何でもないです。
ほらこの通り……

​全くもう……
病室で騒が
ないで下さい。

​…………

​………!

​………。

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​ブランク………
私どうしたら……。

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​君、もしかしてドライヤー
持ってないかな。

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​ド、ドライヤー?

​……!

​ああ、なんだ。
君は昨日の……

​その様子じゃ、
怪我はなかった
みたいだね。

​………この子の髪、
こんな色だっけ?

​あ、あなたに……
話がある。

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​随分変わった尋問だな。
何だ?その紙は……

​ただの資料。
も、文句ある?

​ふん、まぁいい。
さっさと始めたら
どうなんだ。

​うわ、何だこの子。
顔に似合わず
ガサツな口調……

​少女というより
男の子みたい。

​首都警察局

​犯罪者データベース

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​単刀直入に聞く。あなたは
「アーセニウス」 と呼ばれる
人物の関係者だね。

​…………。

​あなたたちのグループ……
特にリーダーである彼についての
詳しい話を聞きたいと思ってる。

​連続窃盗犯
通称 「アーセニウス」 。

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​約十年前より欧州各国
に出没。逮捕歴は皆無、
一度も捕まってない。

​本名、国籍、種族
などの個人情報は
一切不明……

​手品師のような
格好をしているという
噂もあるが、未確認。

​過去の罪状は数知れず。
宝石強盗、人質誘拐、
企業スパイに詐欺行為……

​そして昨夜、博物館から
ウルフォーゲルのオーブ
を盗み出した。

​それがあなたの
カバンにあった。

​…………。

​……あのカバンは今、
私の家で預かってる。

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​いや、ほら、
悪いとは思ったけど、
あなたは眠ってたし。

​あのまま放置して
誰かに見られたら……。

​安心して、知ってるのは
私だけだから。
誰にも教えてない。

​…………。

​……ふぅん。

​おかしなことを言うもんだね。
君は警察の人じゃないのか?

​そ、そうだけど。

​あの荷物のことを
報告しないでいいのか?

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​そんなことをすれば、
私はあなたに手錠を
掛けなきゃいけなくなる。

​この場所はすぐ噂になる……
あなたは命を狙われてるようだし、
もし居場所が知られたら……

​殺される……と、
そう言いたいんだね。

​今は秘密にするしか、
あなた守る方法が……

​ありがとう。
君の厚意に感謝するよ。

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​別に盗っ人を
匿ってやるわけ
じゃない。

​警察官として、
人をみすみす見殺し
にはしないってだけ。

​なるほど、
人命は尊重して
くれるわけか。

​それに……

​私が死ぬような
ことがあれば……

​次に狙われるのは
刑事さん、君だからね。

​えっ。

​私はここにいるのに、
荷物だけが無くなっている……
連中は疑問に思うよ。誰が
荷物を持ち去ったのか……。

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​当然、私を保護した警察官が
疑われる。そうなったら君も
確実に消されるだろうね。

​言っておくが、今更あれを
返しても遅いよ。君を道連れに
する方法は幾らでもあるからね。

​むぐっ。

​私たちは一蓮托生、
というわけだね。

​いや、すまない。
失礼な事を言った。

​お互いしばらく身動き
出来ないんだ。仲良く
しよう、刑事さん。

​………。

​その 「刑事さん」 って
のは止めてくれる?

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​私はただの……
制服警官だから。

​それじゃあ、
君のことはなんて……

​あれを預かる代わりと言っては
なんだけど、これを貸してやる。

​DVDプレイヤー?

​入院中、退屈だろうな
と思ってさ。

​なにそれ。

​いや、その……
うちにあったのを適当に
持ってきたんだけど……。

​ア、アメリカのアニメだよ。

​「秘密探偵メール・ブランク」?

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​でも、どうして……?

​昔、私もここに入院してた
事があって……当時はもっと
小さな病院だったけど。

​何にもやることが
無くて暇だった事を
思い出して……

​あ、退院したらちゃんと
返しに来てよね。例の荷物と
引き換えだ。

​………ありがとう。
なるべく早く元気になって、
これを返しに行くよ。

​ずっとこれを取り上げたままじゃ、
君のお子さんが可哀想だからね。

​…………。

​…し……けど……。

​え?

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​子供なんか
いないし……

​そのDVDも
私のなんだけど……

​くくくっ。

​あははははっ。

​ちょっと、
笑わないでよ!

​いや、すまない。
悪気はないんだ。

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​私はアリス。
アリス・シャーロック。

​あなたの名前は?

​………マリー。

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​どうして、私はあの時……

​なんだか妙なことに
なっちゃったな……。

​昨夜、橋に行った事が
バレてないか心配だけど…
その様子はないみたい。

​あとは、うっかり
口を滑らせないように
気をつけなければ……

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​シャーロックです。

​もしもし、
私です。

​なんだ、巡査か。
どうかしたの。

​実は困った事に……
すぐこちらに来て
くれませんか。

​こちら…って、
一体どこだよ。

​ほら、例の……
昨夜の飛行船の
墜落現場です。

​そ、そ……そんな事故は
私の知ったことじゃない。
そっちで適当にやりなさい。

​他の者ではどうしようもないんです。
どうしても先輩が必要でして……

​………………。

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​……いや、まさかな。
平気だとは思うが……

​無理に断るのも
おかしいし、
とりあえず現場に
行くしかない……。

​……なんか、今日は
やけに人が多いな。

​失礼、通して下さい。

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​はい、押さないで
くださーい。

​危ないですから
入らないで
くださーい。

​どんな状況?

​あ、アリス先輩。

​それがちょっと……
川の向こうの署と
揉めてましてね。

​ほら、丁度橋の真ん中に墜落した
ものですから……どちらの管轄かで
言い争いになったんですよ。

​それじゃ、飛散した
部品を数えて……

​より多く
散らばってる方
の管轄としよう。

​冗談じゃない!
こっちの方が多そう
じゃないか!

​重そうなパーツ
が散らばってる
方が……

​………………。

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​まさか、喧嘩の仲裁を
させるために私を……?

​ある意味ホッと
したけど……

​はぁ?

​私は呼んでなんか
いませんよ?

​なんで私が先輩を呼ばなきゃ
いけないんですか。気が済んだら
さっさと戻って下さい。

​あー、ちょっと!
そこのあなた!

​え、私は
てっきり……

​あれ?じゃさっきの
電話、一体誰……?

​困りますよ、
一般の方は
立ち入り禁止……

​?

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​あ……

​よぉ。

​あなた、
昨日の……

​あの、現場の調査の
邪魔になりますから
入らないで下さい。

​悪いですけど
ペット探しは
また今度に……

​いや、いいんだ。
今日はお前に用が
あるんだ。

​え…?

​俺が電話でお前を
呼び出したんだよ、
アリス。

​なぜ私の名前を……

​悪く思うなよ。
お前のことは調べ
させてもらった。

​あ、あなたは
一体……?

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​俺の名はジェームズ……
ジョニー・ジェームズ。

​保安局の
捜査官だ。

​アリス・シャーロック巡査部長。
ウルフォーゲルのオーブ盗難事件
について、お前に話がある!

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​危ないぞ、
メール・ブランク!

​わかってるさ!

​秘密兵器
「のびのびパンチ君」
を喰らえ!

​うぬぬ、なかなか
やるな!だが
これならどうだ……

​……………。

​アメリカのアニメ、か……。

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​保安局……通称、情報五課。
なぜあんたたちがこの事件に?

​ロンドンの中心部で飛行船が
爆発炎上。テロ未遂事件として
五課が動いてもおかしくないさ。

​もっとも、俺の
考えじゃあ、あれは
テロなんかじゃない。

​糸を引いてるのは、
アーセニウスだ!

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​知っての通り、
我々五課には逮捕権が無い。
犯人に手錠を掛ける時は
お前ら警察が必要になる。

​でも、なんで
私みたいな普通の
お巡りを?

​五課への協力は
特務課の刑事の
仕事じゃあ……

​もちろん、
理由はある。

​アリス、お前に
だけは話すが……

​どうやら警察内部に
犯人一味に手を貸している
者がいるらしいんだ。

​……⁉︎

​け、警察内部に共犯者?
それは由々しき告発だぞ。
い、一体何の証拠が……

​これだ。

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​今朝、飛行船の残骸の下に
埋もれていたのを見つけた。

​お前にも見覚えがあるだろ。
これは首都警察局が採用
している型の警察無線だ。

​あ……

​そ、それで……
無線機の持ち主は?

​いや、それは
不明だ。

​残念ながらデータは完全に
破壊されていて、個人を特定
出来る情報は無かったよ。

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​だが、昨夜あの場所に
警察官がいたことは
間違いないのさ。

​助かった……

​だが、まだ安心は出来ないぞ。
無線機を紛失した事がバレたら
私が共犯者にされてしまう……

​いや、私がオーブを
預っているのは
事実だけど……

​断じて窃盗の共犯
などではない!

​そんな事を話していいの?
私が共犯者だという可能性も
あるでしょうよ。

​ははは、それは100%
あり得ないよ。

​お前は昨日、鳥を捕まえるのを
手伝ってくれたからな。

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​無線機が墜落現場にあったことから
考えて、この持ち主は犯人一味と
行動を共にしている可能性が高い。

​事件当日は相当忙しく
立ち回っていたはずだ。

​市民のペット探しを
手伝うような、暇な
お巡りなんぞが……

​盗難事件に関わって
いるはずがない、
って言いたいの……?

​その通り!
我ながら名推理だ。

​表立って刑事に協力を仰ぐのは
ちょっと危険だからな。
そんなわけでお前を選んだのさ。

​………………。

​それにしても、まさか鳥を
追い掛け回してた変な男が
五課のスパイだったとは。

​へへっ。
意外だったろ?

​………ん?
って事は、あの鳥が言ってた
機密書類がどうのこうのって
……もしかして本当の話?

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​……やっぱり。

​あんなに必死だったのは、
あの鳥が秘密を漏らして
あなたの立場が危なくなる
かもしれないから?

​誰にも言うな!
誰にも言うなよ!

​わああああああ‼︎

​言ったら殺す!

​わ、わかった!
わかったから!
ハンドル!

​そうさ……あいつは
俺が仕事の電話をするのを
いつも横で聞いてたんだ。

​し、心配
しすぎだよ。

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​あいつがもし
何かヤバい事を
喋ったら……

​私が聞いた限りでは
抽象的な事しか言って
なかったし……

​何日かしたら
全部忘れちゃう
かも……。

​いいや、あいつの
性質は俺が一番
よく知ってる。

​自然に忘れるには何ヶ月も……
台詞を消すには別の文章を
吹き込んで上書きするしか……

​捕まえてやる!
鳥ぐらい私が
捕まえてやるから!

​だからちゃんと
前見て運転して!

​ティラミス恐竜博物館

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​オーブ盗難事件の現場だ。
俺はここで関係者に話を聞く。
お前も適当にぶらぶらしてろ。

​あ、うん。

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​こ、これは
一体……?

​ああ。ひどい
有様だよなぁ。

​あ、アリス?

​タバサ!なんで
こんな所に?

​そりゃこっちの台詞よ。
私は鑑識。あんたは他の区の
お巡り。何しにここへ?

​このところ色々
ありまして……。

​タバサ、この大量の
瓦礫は何なの……?

​骨よ、これは。

​あ、骨って言っても
恐竜の骨ね。

​ああ、よくあるアレか……
骨格標本ってやつ?

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​原型が分からないほど
粉々じゃん。
一体ここで何が?

​アーセニウスが
爆破したの。

​爆破⁉︎

​犯行日時は予告されて
いたから、博物館側は
その時に合わせて……

​警備員を大勢配備
していたみたい。
ところが……

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​キャ──‼︎

​わあああああ‼︎

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​顔を見た者はいないみたい。
とにかく、爆発と立ち込める煙で
館内が大混乱に陥った隙に……

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​視界が開けた時には
オーブは消えてた……
ってことらしいよ。

​ふーん……。

​これから骨の破片を調べるの。
硝煙反応から爆弾の種類が
絞り込めるかもしれないしね。

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​酷い話だよねぇ。
何百万ポンドもする標本を
宝石一個のために
粉微塵にするなんて……。

​…………

​……何百万ポンド⁉︎

​こ、こんな、
ただの骨がそんなに
高価なのか……。

​恐竜学者が
この光景を見たら
卒倒するわね!

​ね?ね?
今夜一緒に
食事でもどう?

​舌平目が
美味しいお店
があってさ。

​あいつ、わざわざ
事件現場まで来て
何やってるんだ?

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​ああ、どうも……はい、
私がこの博物館の館長、
マイク・ティラミスです。

​ここにオーブを展示
してあったのです。

​何の変哲も無い台ですね。
ガラスも無いんですか?

​はあ……しかし、
セキュリティは完璧だと
思っていたものですから。

​ほら、四方に監視
カメラもあります。

​カメラの映像は
警備室からも見張って
ましたし……

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​同じ映像を外部の警備会社
にも送信し、24時間体制で
監視していたのです。

​確かに、監視体制は
完璧のようですが……

​爆煙で視界が途絶えて
しまえば、カメラも役に
立たなかったわけですね。

​まさかこんな事に
なってしまうとは……
ああ、めまいが……。

​大丈夫かな、この人……。

​ところで館長。
一つ大きな疑問が
あるんですが……

​ここは恐竜の博物館なのに、
なぜ鳥の絵が描かれた工芸品
なんか展示したんですか?

​えっ?そこですか?
は、はぁ……

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​ジョニー君、
困るんだよぉ。

​つべこべ言うな、
グレッグ。

​他所の署の、しかも
制服警官を勝手に
連れ回したりして。

​我々警察にも管轄
というものが……

​お前に迷惑はかけて
ないだろ。
これも捜査の一環だ。

​アリス、
そろそろ帰るぞ。

​あ、うん。

​…………。

​なんだ、お前も
関係者に話を聞いて
回ってたのか。

​い……いや、
そんなつもりじゃ……

47ページ目

​うんうん、感心感心。
これからも刑事役を
頼んだぞ。

​………。

​ところで、
さっきのオジサン
誰だったの?

​ああ、あのデコスケか。
以前仕事で知り合った
刑事だ。本物のな。

​いいか、アリス。
他の警察官もそうだが……

​特にあいつには
絶対事件のことを
話すんじゃないぞ。

​もしかして、
あの人を疑ってるの?
ま、まさかぁ……

​そういうわけじゃないが、
あいつはお調子者で口が軽い。
すぐ余計な事をペラペラと……

​な、なんか
あったのかな……

48ページ目

​とにかく、
こいつと一緒に
行動する間……

​余計な事をして
ボロが出ないように
しなきゃ。

​そうだ、証拠さえ
掴まれなければ
私は安全なんだ。

​どうか、
このまま……

​何事もなく、
切り抜けられます
ように……

49ページ目

​こっちでも探してるが、
情報が少なすぎる。まだオーブに
ついての手掛かりはないのか。

​こちらも
全く進展がない。

​なぁ、とてもじゃないが
俺たちだけじゃ手が回らない。
もっと人手を増やせないか。

​馬鹿言え!
あまり大っぴらに動くと
怪しまれる。

50ページ目

​俺達がオーブを狙ってるって
事自体、絶対に秘密なんだ。
バレたら俺達全員の首が危ない。

​元はと言えばお前のヘマだ。
ボスは相当イラついてるぞ。
何とかしろ。

​……………。

​クソッ。

​一体どこへ
消えやがったんだ、
あの小娘どもは……

​弾は命中したはずなんだ。
どっかで野垂れ死んでても
よさそうなもんだが……。

​……待てよ。もし死体が
上がって、警察に事件として
処理されていれば……

51ページ目

​首都警察データベース

​TO BE CONTINUED...