全12話予定 R-15 

フェリスマンの国

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第4話 前に前に進め

1ページ目

(1コマ目:バキッという音と共に破壊されるドアと、そこに打ち付けられていた板。必死に大きな斧を振るっていたのは、茶ブチの飲み仲間の白い人猫だった。)

第4話

前に前に進め

(2コマ目:武器の斧を右手に、破壊されたドアを押して開く、騎士の制服姿の白。その後ろには同じく斧を抜いたハチワレと黒が続く。)

やっと
開いたか…

(3コマ目:見張り塔に続く渡り廊下を歩いていく人猫たち。)

2ページ目

(1コマ目:屋根の上によじ登る白とハチワレ。長い手袋とエプロン状のツナギを着込み、鼻と口を布で覆っているが、それでも眼前に広がる血だまりの強烈な臭いは防げず、思わず顔を歪める。)

ううっ…

これは
きついな…

(2コマ目:物悲しそうな黒。)

……さぁ、
早いとこ降ろして
やろう。

(3コマ目:すっかり明るくなった官邸の正門前道路のロングショット。見張り塔やその屋根の上には作業にあたる人猫たちが集まり、地上には整理にあたる騎士や野次馬が大勢いる。)

(4コマ目:どんよりした雰囲気で話し込んでいるナオミと副部長。)

誰かちゃんと
説明してください!

(5コマ目:突如響いた誰かの大声に、ナオミは振り返る。)

3ページ目

(1コマ目:戸惑う警備の人猫たちの前で不安な顔をしながら声を張っているのは、死んだ茶ブチの新妻だった。)

夫は…私の夫は
どこですか⁉︎

(2コマ目:その光景を見つめる副部長とナオミ。)

あ、あれは…
奥様でしょうか。

ど、どうしま
しょう。

…私から
伝える。

(3コマ目:未亡人に向かって歩みを進めるナオミ。)

(4コマ目:警備の一人が、近付いてくる上司に気付く。)

あ、け、
警備部長!

警備部長?

(5コマ目:ナオミの姿を見て怪訝な表情になる未亡人。)

人間……?

4ページ目

(1コマ目:戸惑い続ける未亡人に向かって深々と頭を下げるナオミ。)

(2コマ目:ナオミは頭を下げたまま話す。)

(3コマ目:見張り塔の屋根の上。血溜まりの中に、何かがあるのに気づく白。)

あ…

(4コマ目:真っ赤に染まった手袋が拾い上げたのは、血液を滴り落とす剥き身の小刀だった。)

(5コマ目:ボカッ、という音が地上から聞こえる。何事かと振り向き、地上を見下ろす白。)

(6コマ目:地上では未亡人が、夫の上司に向かって拳を振り下ろしていた。バランスを崩して倒れるナオミ。周囲の人猫たちが慌てて二人に走り寄る。)

5ページ目

(1コマ目:地面に倒れ込んだナオミを力一杯踏みつける未亡人。)

(2コマ目:背広の人猫に羽交い締めにされ、引き離される未亡人。さらに警備部の騎士たちが、ナオミを庇うように取り囲む。)

(3コマ目:人猫たちに羽交い締めにされながらも涙を流し、顔を真っ赤にしてナオミに向かって何かを喚き続ける未亡人。)

(4コマ目:ナオミは騎士たちに庇われながらゆっくり起き上がろうとするが、まだ顔を上げることはできない。)

6ページ目

(1コマ目:がらんとした官邸内の食堂。ロングテーブルと丸椅子が規則正しく並ぶ中に、一人寂しくポツンと立ち、殴られた頰をさするナオミ。)

(2コマ目:ナオミの背後から、故人の友達だった白い人猫がスタスタと歩いてくる。)

警備部長、
あ、あの…

ご覧いただき
たいものが…

(3コマ目:騎士が両手に白い布に小刀を抱えていた。血液はすっかり拭き取られ、さやとつかは本来の輝きを取り戻している。)

屋根の上で
見つけました。

(4コマ目:小刀を手に取り、それをまじまじと観察するナオミ。)

これって…

(5コマ目:小刀をさやから抜いて刀身を確認するナオミと、悲しそうにそれを見ている白。)

奥さんの…
ですよね、
きっと。

あの人に
返すべきかどうか
分からなくて…

だって、夫が自分の
小刀で自殺した
なんて知ったら……

7ページ目

(1コマ目:物悲しい顔を下に向けながら、パチっとさやを再びはめるナオミ。)

…ああ、
知らない方が
いいだろう。

これは私が
預かって
おく。

(2コマ目:ナオミの背後の側にある廊下から、寝間着姿のサンドラが現れ、警備部長はその声に驚く。)

警備部長、
何かあった
のか?

(3コマ目:ナオミを睨みつける、ボサボサ髪の不機嫌そうな顔。)

なぜ今朝は
誰も起こしに
こない。

(4コマ目:慌てて振り向きながら、サンドラに見えないよう上着の内側に小刀を押し込むナオミ。)

そ、総理。
もうお目覚め
でしたか。

(5コマ目:食堂の中に入ってくる総理大臣。それを止めようと早足で近くナオミの両手は既に空になっている。)

外が騒がしい
ようだが…

い、今は
表に出ない方が
よろしいかと…

(6コマ目:絵のないコマ)

……その時、
私は彼のすぐ近くに
いたんです。

8ページ目

(1コマ目:そこは中庭の入り口だった。明るい日差しが庭に降り注ぐ中、ちょうど日陰になる位置にいる二人。庭に降りる段差に腰掛け、うなだれているナオミの横に、相変わらず寝間着姿のサンドラが立っている。)

でも、扉を
開くことが
できなかった。

私のせいで
彼は……

もっと私に
力があれば…

あるいは、
もっと早く人を
呼びに行って
いれば…

(2コマ目:口数の多いナオミを物静かに見下ろしているサンドラ。)

(3コマ目:自分の額を片手で抑えるナオミ。)

…ああ、もし今回の
ことを新聞にでも
書き立てられたら…

は?

総理にもご迷惑を…
一体どうやって
おわびすれば…

(4コマ目:ナオミを見下ろしながら、少し呆れた様子で口角を上げるサンドラ。)

…なんだお前、
ブン屋の心配など
してたのか。

そんなことは
気にするな。
大丈夫さ。

(5コマ目:顔を上げるナオミをよそに入り口を横切るサンドラ。その明るい髪の毛を日光が照らす。)

総理…

余計なことは考えず、
今はただ彼の冥福を
祈ろうではないか。

9ページ目

(1コマ目:そう語るサンドラの横顔には少し影があった。)

……お前のせい
なんかじゃないさ。

(2コマ目:暗い部屋、台座に置かれた黒い死体袋。かつての同僚らが見下ろす中、未亡人はかつての夫の亡骸にすがりついて泣いていた。)

マルコ‼︎

(3コマ目:絵のないコマ)

10ページ目

(1コマ目:ある日の昼間の官邸。)

しばらくは空気が沈んでいた官邸にも、
数日後には元通りの日常が戻ってきた。

(2コマ目:広々とした総理大臣の執務室。自分の大きなデスクの大きな椅子に座り、メガネを掛けた総理は手元の冊子に視線を落としている。デスクの前方にあるローテーブルには警備部の副部長らや秘書官たちが腰掛け、同じ冊子を持っている。総理の正面に立ち、やはり同様の冊子を持って解説をしているのはナオミだ。)

…えー、以上が
副都サミット中における
警備計画の概要です。

(3コマ目:サンドラが手に持っていた冊子をポイと放り出す。)

情けない…
君には想像力という
ものがないのかね。

は⁉︎

(4コマ目:椅子に座ったままひょうひょうとした様子で説教をする総理と、それに苛立ち、見る見る鬼のような形相になったナオミ。)

こんなガチガチの
スケジュールでは
不測の事態に対処
できんだろう。

もっと柔軟に、
時間に余裕を
持たせたまえ。

11ページ目

(1コマ目:サンドラに顔を近付けるナオミ。キョトンとする総理に警備部長はたんかを切る。)

何が不測の事態ですか。
どうせ自由時間に
遊びたいだけでしょ!

(2コマ目:人猫たちが見守る中、思わず立ち上がってナオミを指差すサンドラと、一歩も引かずに机に両手を置いているナオミ。)

う、うるさい!
政治家にはいろいろ
あるんだよ、
この脳筋!

やかましい!
副都は私の方が
詳しいんだ!
黙って私に従え!

(3コマ目:ガミガミ、ギャーギャーと騒がしい執務室で、警備や秘書の人猫たちはのんびりと向き合い、茶などを飲んでいる。)

平和ですねぇ。

ええ。

(4コマ目:廊下を歩く白猫のトム。)

オデカケデ
ゴンス

(5コマ目:もとい、廊下を進むサンドラ。片手に黒い表紙の手帳を持っている。後ろからナオミの声が掛かる。)

総理、お待ち
ください。

12ページ目

(1コマ目:官邸の正面玄関に停まっている二頭立ての馬車。玄関から後ろを気にしつつ出てくるサンドラ。背後からはナオミが早足で追いついてくる。)

もー、いちいち
外出先について
くるなよ。

しょうがない
でしょう。
身辺警護する決まり
なんですから。

(2コマ目:パカパカパカと歩き始める馬。馬車の上には御者が一人と、背面にも二人がおり、いずれも人猫の騎士が勤めている。)

(3コマ目:馬車の屋形の中。窓の外では王都の街並みが流れている。)

今日はこれから
王宮に行って
王に謁見する。

(4コマ目:馬車の中に対面して座っているナオミとサンドラ。)

いわゆる定例謁見だ。
これまで延期されていたが、
今後は定期的に行うことに
なるからな。

(5コマ目:真面目な顔のナオミと、手元の手帳を開いて目線を落とすサンドラ。)

王様に会って
何をお話しされ
るんですか?

私の仕事ぶりの
報告…といった
ところだな。

形式上は
王は私の上司
だからな。

13ページ目

(1コマ目:ナオミが見つめる中、手帳に目線を落としたままのサンドラは不安そうな表情になる。)

(2コマ目:皮肉っぽい笑みを浮かべるナオミと、慌ててそれを睨み返してみせるサンドラ。)

珍しく
弱気ですね。
緊張してるん
ですか?

だ、誰が
緊張など…

(3コマ目:しかし、サンドラの強気はすぐに霧散し、その表情は再び不安に包まれる。)

…そうかもな。
相手が相手だ。

(4コマ目:その小さな両手の細くしなやかな指で手帳を閉じ、再び膝の上に置くように抱える。)

王宮に行くのは
親任式のとき
以来だし…

王と二人きりで
話をするのは
今回が初めてだ。

(5コマ目:ナオミはなぜかサンドラの手にぼーっと見とれていた。)

…………。

(6コマ目:サンドラに笑顔を作って見せるナオミ。)

…大丈夫ですよ。
王様といえど所詮は
一人の人猫です。

それはそう
かもしれんが…

(7コマ目:態とらしく得意げな顔で、ベルトの左腰にはかれたサーベルを左手でポンと叩いてみせるナオミ。)

もし噛み付いてきても
私が守りますよ。
そのための警護
でしょう?

ばっ…お前なぁ。
言って良い冗談と
悪い冗談があるぞ。

14ページ目

(1コマ目:呆れた様子で右手で右目を覆うサンドラ。)

だいたいお前は
私の部下である以前に
王に忠誠を誓った
騎士ではないのか?

(2コマ目:しかし、ナオミは真面目な表情で淡々と答える。)

名目上は
そうですが…

騎士団の最高指揮官は
あくまで総理大臣です。
君主ではありません。

よく言う…

(3コマ目:いつもの高飛車な態度に戻り、そっぽを向いてわざとらしくやれやれとため息をつく総理。)

最高指揮官など
それこそ形だけだ。

騎士団もお前も
私に指図ばかりして
命令なんか
聞きゃしない。

あなたの安全の
ためですよ。

(4コマ目:ムッとなるサンドラ。)

……。

(5コマ目:少し強気になったのを見て安心したのか、ナオミは少し柔らかい表情でサンドラを見ている。)

……いずれにしても、
王と政府が対立など
したら世も末だな。

(6コマ目:王都の街並みの奥に、ひときわ大きい建物が見える。四角いブロック状の構造がいくつも集まって出来たような、十数階はあろうその巨大な建造物は、陽の光を浴びて白く輝いている。)

15ページ目

(1コマ目:二人が進む目の前に大きな入り口があった。扉は開かれているが、入り口の奥は真っ暗で何も見えない。入り口の両脇には同じく槍を持った人猫の兵が二人立っている。)

(2コマ目:サンドラが間を通り抜けると、突然兵たちはガッと槍を交差させて後ろにいたナオミの行く手を遮った。)

失礼!

なっ⁉︎

16ページ目

(1コマ目:交差された槍の向こうにいるナオミを指差しながら、横にいる人猫の兵に向かって声を荒げるサンドラ。)

おい、そいつは
私の警護だぞ!

総理大臣閣下、
これより先は我々
王室近衛兵が守りし
王家の領域です。

(2コマ目:もう一人の近衛兵も口を開く。)

申し訳ありませんが、
騎士団の方は
お進みになれません。

(3コマ目:急に不安そうな顔になってナオミを見つめるサンドラ。)

…………。

総理…

(4コマ目:ナオミを見つめたままのサンドラ、棒立ちでそれを見つめ返すナオミ。その行く手を槍で遮り、二人の間に立ちはだかる二人の人猫の近衛兵。)

……仕方ない。
警備部長、その辺で
待っていろ。

(5コマ目:緊張した面持ちで真っ暗な部屋の中を進んでいくサンドラと、部屋の外でそれを見送るナオミ。)

かしこまり
ました。

(6コマ目:槍を縦に戻し直立姿勢に戻った二人の近衛兵。ナオミは入り口から少し離れたところでやれやれと言った風に右手をおでこに当てている。)

まずったな…そんな
しきたりがあったとは。
下調べが足りなかった
か……。

17ページ目

(1コマ目:上から見た王宮。建物のてっぺんは広々とした空中庭園になっており、芝生が生い茂り、木々や池が植えられている。)

(2コマ目:暗い室内から日光が降り注ぐ庭園に足を踏み入れるサンドラ。)

(3コマ目:庭園の中央には石でできた四角いエリアがあり、その真ん中に付いた屋根が小さな日陰を作っている。日陰の中にはテーブルと二つの椅子があり、サンドラから見て手前の椅子には何者かの背中があった。)

連載途中のエピソード (17 / 46 ページ完成)