Amaitorte

全12話予定 R-15 

フェリスマンの国

連載途中のエピソード (27 / 58 ページ完成)

第5話 優しい思い出

1ページ目

(1コマ目:夕方の空。険しい色の雲。)

うわっ‼︎

(2コマ目:ドスッ、という重い音と共に背中から地面に叩きつけられたのは甲冑姿の人猫の騎士だった。)

(3コマ目:痛みに顔を歪める細目の灰色の人猫。そばには木剣が落ちている。)

いてて…

(4コマ目:人猫の眼前にサッと差し向けられる木刀のきっさき。)

2ページ目

(1コマ目:夕方の空の下、何人かの人猫たちが見守る中、灰色の人猫が見上げた先には、肩まで伸びた長い黒髪の人間の騎士が居た。百人隊長時代のナオミだ。)

第5話

優しい思い出

(2コマ目:上体を起こし、ナオミを見つめながら苦笑いを浮かべる灰色。)

…もう、隊長は
容赦ないんだから…

(3コマ目:ニヤリと歯を見せて笑う甲冑姿のナオミ。)

キッシッシ。

お前が弱いのが
悪いんだよ。

3ページ目

(1コマ目:がしっとお互いの腕を掴み合う、人間と人猫。ナオミはそのまま灰色を引っ張り上げる。)

(2コマ目:二人の様子を見ていたギャラリーの騎士たち。)

あーあ、グーベン副長
今回も勝てなかったか。

(3コマ目:残念そうにしつつも満足げに笑う人猫たち。)

あれでも
人猫同士なら
負けなしなのにな。

ははっ、
隊長が相手じゃ
仕方ねぇさ。

(4コマ目:徐々に深みを増す夕焼け。)

今日の訓練は
ここまで!

(5コマ目:横に並んだナオミとグーベン。その前には大勢の人猫の騎士たちが整列している。)

明日はいよいよ
作戦の決行日となる。

今夜はしっかりと休息し、
英気を養っておくように。
以上!

4ページ目

(1コマ目:夜。三日月の下、人口の光で眩しく照らされた副都の街並み。)

(2コマ目:川に掛かった橋の上を行き交う人猫たちの中に、一人端の手すりにもたれかかって立っているグーベン。)

(3コマ目:明るい色のジャケット、スラッとした黒いズボン。平服姿のグーベンは、片手をジャケットのポケットに突っ込み、もう片方の手で懐中時計を眺めている。)

(4コマ目:そこに近付いてきたナオミの後ろ頭と、ナオミに気付いて笑顔になるグーベン。)

グーベン。
すまん、遅くなった。
待ったか?

ああ、いえ、
私もさっき
来たとこ…

5ページ目

(1コマ目:照れ臭そうに身をよじりながら歩み寄ってくるナオミ。ジャケットを羽織り、首元にはリボンを巻いている。パンプスを履き、真っ白いスカートに不釣り合いなサーベルを腰から下げている。ナオミは不服そうな表情だが、その頬は赤らんでいる。)

…って、隊長!
なんですか、
その格好⁉︎

な、なん
ですかって
お前…

何かおかしい
かよ。

(2コマ目:ナオミの様子を見て優しい笑みを浮かべるグーベン。)

(3コマ目:端の真ん中で対峙するグーベンとナオミ。)

……平服なのに
佩刀してるのが
おかしい。

なっ…⁉︎

ば、馬鹿もん!
騎士たる者が
丸腰で出歩けるか!

6ページ目

(1コマ目:赤くなりながら怒り顔でずんずん歩くナオミ。)

……いや、
本当のことを
言うとな…

(2コマ目:通りを行くナオミとグーベン。)

きょ、今日はその…
大事な儀式だろ?
だから持参したんだ。

そら殊勝なことで…
でも儀式用の刀って
小刀なんじゃ…?

(3コマ目:絵のないコマ)

う、うるさいな!
似たようなもんだろ、
小刀は無くしたんだ!

あなたって人は…
律儀なんだか、
適当なんだか…

ああ、もう、
いいから
早く行くぞ!

(4コマ目:打って変わって、街灯すらない薄暗い通り。建物からぶら下がる看板が光る。)

宿屋

(5コマ目:小さな建物が立ち並ぶ人気のない暗い通りで、宿屋の前で立ちすくんでいるグーベンとナオミ。)

…着きましたね。

………。

7ページ目

(1コマ目:薄暗い室内。緊張した面持ちで腰から外した刀の鞘を持っているナオミ。)

(2コマ目:カチャ、と静かに刀をベッドサイドテーブルに立てかける。)

(3コマ目:部屋の天井。)

…なぁ、こんなこと、
本当に必要なのか?

なんですか、
今更。

(4コマ目:真っ白い浴衣に着替えたナオミ。ベッドの真ん中に座り、俯いて怒ったような顔をしている。)

……もし、
私が相手では嫌だと
おっしゃるなら、
今からでも…

べ、別に
お前が嫌だとは
言ってない!

ただ…古臭くて
馬鹿げた風習だと
思っただけだ。

8ページ目

(1コマ目:自分の死角で気まずそうにしている、同じく浴衣姿のグーベンに向かって話しかけ続けるナオミ。)

婚前式なんて…

(2コマ目:ベッドの上で正座しているナオミに、同じように話しかけるグーベン。)

…合理的な習慣だと思います。
体格が大きく違う種族同士
ですから。

結婚した後で、その…
相性が悪いことが分かると
それは悲惨らしいですよ。

…………。

(3コマ目:少し寂しそうな目になるナオミ。)

グーベン、
お前こそ…

…嫌じゃないのか、
私なんかが相手で。

9ページ目

(1コマ目:そっぽを向いているナオミと、振り向いてナオミに近づいていくグーベン。)

私の方が
年上だし…

隊長。

ガサツだし…
戦うことしか
能がなくて…

人間らしい
ところなんて
何も…

(2コマ目:目を合わせないナオミ。)

やっぱり、
お前にはもっと
ふさわしい
やつが…

隊長!

(3コマ目:グーベンがナオミの手を取り、ぎゅっと優しく握る。)

(4コマ目:振り向いたナオミ。ベッドに上がっていたグーベンが、ナオミの目をしっかりと見据えながら両手でナオミの手を包む。)

嫌なわけ…
ないじゃない
ですか。

10ページ目

(1コマ目:グーベンの真剣な眼差し。)

世間の言うこと
なんて関係ない。

あなたは
素敵な人です。

あなた以外の
人なんて
考えられない。

(2コマ目:グーベンを見上げ、嬉しそうに顔を赤らめるナオミ。)

グーベン…

(3コマ目:向かい合う二人。)

私も……
同じ気持ちだ。

お前以外のやつと
一緒になるなんて、
あり得ない。

(4コマ目:絵のないコマ)

大丈夫、
大丈夫です。

きっとうまく
いきます。

ああ、
そうだな…

11ページ目

(1コマ目:二人の腕と腕。)

(2コマ目:グーベンの笑顔に触れるナオミ。)

……隊長、
平気…ですか。

どうだ…見たか。
何も…問題など、
なかっ…たな。

ええ…
そうですね…

(3コマ目:抱き合う二人。)

これで…

ああ…私たち、
結婚できる…な。

12ページ目

(1コマ目:暗い部屋の中。ベッドに仰向けになっているグーベンは無表情に目を閉じている。ナオミはそのグーベンの上に乗っかるようにうつ伏せになっている。)

(2コマ目:放心状態でどこか遠くを見ているナオミ。両腕や背中にはあちこちに古い切り傷が見える。)

ふわふわ……

13ページ目

(1コマ目:暗い部屋。閉じられたカーテン。)

………明日の作戦で、
私たち……死ぬかも
しれないんだよな…。

………。

(2コマ目:絵のないコマ)

…大丈夫です。

(3コマ目:絵のないコマ)

あなたのことは、
私が必ず守ります。

(4コマ目:少し怖くなったように目を見開くナオミ。)

(5コマ目:しかし、すぐに目を閉じ、安堵の表情を浮かべる。)

……そうか、
頼もしいな。

14ページ目

(1コマ目:明るい空。遠くに見える山々。その下には深い森が生い茂る。)

(2コマ目:暗い森の奥からドドドドと地鳴りのような音を立てながら、全速力で走ってくる集団。陰になってよく見えないが、それは馬に乗った一段らしい。)

(3コマ目:轟音と土煙を上げながら走る馬の脚。)

(4コマ目:暗闇から徐々に姿を現す馬に乗った人猫たち。)

(5コマ目:何十人もの人猫が、長い槍を持ち、鎧を着て馬にまたがり、怒った顔をしながら森の中を走っている。副都騎士団の騎馬部隊だ。)

15ページ目

(1コマ目:部隊の中に一人だけ混じった人間の顔。肩まで伸びた長い黒髪を風になびかせ、真剣な面持ちで馬を駆るのは隊長のナオミだ。)

(2コマ目:横から明るい足音を響かせながら走り寄ってくる馬の脚。)

(3コマ目:それに気付いたナオミの目元のアップ。)

(4コマ目:近寄ってきた馬に乗っているグーベンは、ナオミの少し前を走りながら横目で微笑んでいる。グーベンに向かってナオミが話し掛ける。)

副長!
あまり前に
出過ぎるな!

ははっ。
置いてきますよ、
隊長!

(5コマ目:プープププーと進軍ラッパをを鳴らす別の人猫。)

16ページ目

(1コマ目:前方の光景。森を抜け、広々とした野原に敵の軍勢が集結している。)

(2コマ目:ワアアアアと雄叫びを上げながらこちらに向かってくる敵軍。その構成は、鎧をまとった二足歩行の犬、鳥、ウサギ、スライム状の軟体生物など、様々な生き物の集合体だ。)

(3コマ目:ナオミは腰のサーベルを抜いて敵軍に向け、大声で叫ぶ。)

突撃‼︎

17ページ目

(1コマ目:歩兵、騎兵が入り混じった人猫の騎士団と、その中心で剣を振り上げながら叫ぶナオミ。猛進する彼らの眼前には、同じようにこちらに突進してくる様々な生き物の軍団が広がっている。)

魔王軍の
残党どもを…

皆殺しに
するのだ‼︎

隊長!

(2コマ目:絵のないコマ)

隊長!

18ページ目

(1コマ目:野原に立ち上る黒煙。)

(2コマ目:ズザザ、と滑りながら急停止する馬。その上に乗っていた騎士が叫ぶ。)

隊長!

(3コマ目:あちこちではまばらになった騎士と魔物が争っている。馬を降りた騎士が駆け寄る先には、横たわる人猫を介抱しようとしているナオミの姿がある。)

何やってるん
ですか!

グーベン!
グーベン!

おい、
しっかりしろ!

(4コマ目:緊張した面持ちで周囲を警戒しながらナオミの後ろで跪いた騎士。ナオミは横たわったグーベンに視線を落としたままだ。)

ここは危険です!
早く移動を…

大丈夫だ、
この程度の傷なら
すぐ良くなる。

気をしっかり
持て!

(5コマ目:異変に気付き、ナオミを見る騎士。)

…隊長?

19ページ目

(1コマ目:横たわるグーベン。見下ろす騎士。ナオミはグーベンの腹部を手で一生懸命おさえているが、既にあたり一面は血で真っ赤に染まり、グーベンはぴくりとも動かない。)

グーベン!
どうした、
返事をしないか。

…………。

……隊長、
グーベン副長は
もう……

(2コマ目:ナオミの周囲に騎士が集まってくる。部下たちがざわざわと驚き、戸惑いの目を向ける中、隊長の頬には涙が流れている。)

私がついて
いるぞ、
グーベン。

必ず無事に
連れて帰って
やるからな。

………。

ずっと一緒だ、
グーベン。

(3コマ目:場面は変わり、昼間、街に隣接したどこかの森の中。)

20ページ目

(1コマ目:木々に囲われた草原を一人で歩くナオミ。髪の毛はばっさりショートになり、ジャケットとスカートの軍服を着ている。手には何かの瓶と花束を持っている。周囲の地面には、たくさんの白い長方形の石が規則正しく並んでいる。)

(2コマ目:石はどれも同じ形で、上から見ると縦長の板状で、一つが人の大きさほどだ。それぞれ、表面には何か文字が刻まれている。地面に仰向けに埋められた無数の墓標。そこは墓場であった。)

(3コマ目:一つの石の前に立ち止まるナオミ。)

(4コマ目:石を見下ろし、笑顔になるナオミ。)

…やあ、
グーベン。
今日も来たよ。

21ページ目

(1コマ目:空を見上げるナオミの残念そうな顔。)

王都の実家には
手紙を書いたよ。
結婚は…できな
かった…とだけ。

…詳しいことを
説明する気には
なれなくてな。

(2コマ目:皮肉っぽく笑うナオミ。)

ま、どうでも
いいよな。
実家なんて。

(3コマ目:視線を落とす。)

あれから
一月ほどに
なるか…

(4コマ目:急に顔を上げ、照れ臭そうに自分の髪の毛を触る。)

…ああ、この髪な。
昨日久しぶりに
街に出て…

切ってもらった。
…気に入ってくれる
といいんだが…。

(5コマ目:片手に持っていた花束と酒瓶を見せびらかすナオミ。)

それにほら、
お前が好きだった酒。
一緒に飲もうと思って
探してきたんだ。

(6コマ目:うっとりとした笑顔のまま、ゆっくりと屈み込んでいく。)

…今日も一日、
楽しく過ごそうな、
グーベン。

22ページ目

(1コマ目:ゆっくりと目を開けるナオミ。)

(2コマ目:窓の外からは傾き始めた日の光が黒いドレス姿のナオミを照らしている。ナオミは自宅の自分の部屋で椅子に腰掛け、頬杖をついてうたた寝をしていたところだった。)

………。

…また、
あの頃の夢か…

(3コマ目:絵のないコマ)

…ああ、そうか。
もうすぐ舞踏会に
行く時間だ。

23ページ目

(1コマ目:首相官邸の建物。)

(2コマ目:何か書類の束を持ちながら総理の執務室に入ってくる官房長官。)

サンドラ〜、
聞いて
くれよ。

この間可決させた
国民皆学法のこと
なんだけど…

(3コマ目:サンドラは机に突っ伏して眠っていた。机の上には書類の山が築かれている。)

う、う〜ん…

…あ、寝てた?
ごめん…

(4コマ目:疲れた様子で頭を起こすサンドラ。メガネがずれている。)

……んあ?
…お前かよ。

勝手に入って
くるなよな…。

(5コマ目:目を擦るサンドラと、心配そうな様子の官房長官。)

目が赤いな…
また泣いて
いたのか。

…この書類の
山は?

24ページ目

(1コマ目:ゆっくりと立ち上がるサンドラ。)

私たちの
政策に対する
抗議の手紙だ。

王国中の豪族やら
行政官やら…
マタタビ党に焚き
付けられた連中さ。

そんなものに
わざわざ
目を通してるの?
自分一人で…

持って
こられた
以上はな。

(2コマ目:官房長官の手に握られている紙の束。)

ところで、
お前はなんの
用なんだ?

(3コマ目:慌てて紙束を背中に隠す官房長官と、訝しむサンドラ。)

え、あ…いや…
ちょっと君の
様子を見にね。

明日から
しばらく
会えなく
なるでしょ。

(4コマ目:部屋の隅の棚に置かれていたグラスと酒の入ったガラス瓶に手を伸ばすサンドラ。)

…君、
寝巻きで
仕事してた
のかい?

寝坊して着替える
暇がなかったんだよ。
あのバカが起こしに
来なかったからな。

(5コマ目:サンドラと官房長官の後ろ姿。)

朝から出掛けて
やがるんだ。
全くどこで何を
してるのやら…

あのバカ…
って、
警備部長の
こと?

25ページ目

(1コマ目:酒を口に運ぶサンドラの背後でにやけ笑う官房長官。)

なんだ、
知らなかったの。
もう官邸中で噂に
なってるよ。

コンカツだよ、
コンカツ。

(2コマ目:ぶっ、と勢いよく口から酒を吹き出すサンドラ。)

(3コマ目:げほっ、げほっ、ぐへっ、と苦しそうに咳き込むサンドラ。)

ちょ、
大丈夫?

(4コマ目:振り返るサンドラと対面する官房長官。)

…お前、
今なんて
言った?

だから婚活。
お婿さん探し
だよ。

26ページ目

(1コマ目:屈託のない笑顔の官房長官と呆れた顔のサンドラ。)

舞踏会に行くんだってさ。
ブリブリなんとか伯爵
って人が主催の。

ブリブリ
って…

ブリリスケイフォリース
伯爵のことだな…。

(2コマ目:絵のないコマ)

知ってるの?

王都の北に住んでる
チンケな貴族家だ。
あいつと知り合いとは
知らなかったが…

(3コマ目:官房長官の横顔。)

なんかお母さんに
誘われたっぽいよ。
結婚相手を見つけて
もらうんだって。

(4コマ目:人猫のセリフに、顔を曇らせるサンドラ。)

その伯爵の交友関係は
分からないけど、
良い相手が見つかると
いいねぇ。

婿探し…?

あいつが……?

…………。

27ページ目

(1コマ目:絵のないコマ)

ね、サンドラ。

…サンドラ?
ねぇ、聞いてる?

(2コマ目:夜。何軒もの町屋敷がひしめく御屋敷街。一軒の建物の前の通りが一際明るく輝いている。)

(3コマ目:立派な屋敷の入り口。渋滞した馬車から降りてきたジャケット姿の人猫やドレスの人間が、煌びやかな灯の中に次々と入っていく。)

(4コマ目:弦楽器の音色が鳴り響く中、豪華なダンスホールの中では大勢の人猫、人間が踊っている。)

連載途中のエピソード (27 / 58 ページ完成)