3ページ目
3


あーあ、グーベン副長
今回も勝てなかったか。

あれでも
人猫同士なら
負けなしなのにな。
ははっ、
隊長が相手じゃ
仕方ねぇさ。

今日の訓練は
ここまで!

明日はいよいよ
作戦の決行日となる。
今夜はしっかりと休息し、
英気を養っておくように。
以上!
6ページ目
6

……いや、
本当のことを
言うとな…

きょ、今日はその…
大事な儀式だろ?
だから持参したんだ。
そら殊勝なことで…
でも儀式用の刀って
小刀なんじゃ…?

う、うるさいな!
似たようなもんだろ、
小刀は無くしたんだ!
あなたって人は…
律儀なんだか、
適当なんだか…
ああ、もう、
いいから
早く行くぞ!

宿屋

…着きましたね。
………。
7ページ目
7



…なぁ、こんなこと、
本当に必要なのか?
なんですか、
今更。

……もし、
私が相手では嫌だと
おっしゃるなら、
今からでも…
べ、別に
お前が嫌だとは
言ってない!
ただ…古臭くて
馬鹿げた風習だと
思っただけだ。
8ページ目
8

婚前式なんて…

…合理的な習慣だと思います。
体格が大きく違う種族同士
ですから。
結婚した後で、その…
相性が悪いことが分かると
それは悲惨らしいですよ。
…………。

グーベン、
お前こそ…
…嫌じゃないのか、
私なんかが相手で。
13ページ目
13

………明日の作戦で、
私たち……死ぬかも
しれないんだよな…。
………。

…大丈夫です。

あなたのことは、
私が必ず守ります。


……そうか、
頼もしいな。
21ページ目
21

王都の実家には
手紙を書いたよ。
結婚は…できな
かった…とだけ。
…詳しいことを
説明する気には
なれなくてな。

ま、どうでも
いいよな。
実家なんて。

あれから
一月ほどに
なるか…

…ああ、この髪な。
昨日久しぶりに
街に出て…
切ってもらった。
…気に入ってくれる
といいんだが…。

それにほら、
お前が好きだった酒。
一緒に飲もうと思って
探してきたんだ。

…今日も一日、
楽しく過ごそうな、
グーベン。
24ページ目
24

私たちの
政策に対する
抗議の手紙だ。
王国中の豪族やら
行政官やら…
マタタビ党に焚き
付けられた連中さ。
そんなものに
わざわざ
目を通してるの?
自分一人で…
持って
こられた
以上はな。

ところで、
お前はなんの
用なんだ?

え、あ…いや…
ちょっと君の
様子を見にね。
?
明日から
しばらく
会えなく
なるでしょ。

…君、
寝巻きで
仕事してた
のかい?
寝坊して着替える
暇がなかったんだよ。
あのバカが起こしに
来なかったからな。

朝から出掛けて
やがるんだ。
全くどこで何を
してるのやら…
あのバカ…
って、
警備部長の
こと?
25ページ目
25

なんだ、
知らなかったの。
もう官邸中で
うわさに
なってるよ。
コンカツだよ、
コンカツ。


ちょ、
大丈夫?

…お前、
今なんて
言った?
だから婚活。
お婿さん探し
だよ。
26ページ目
26

舞踏会に行くんだってさ。
ブリブリなんとか伯爵
って人が主催の。
ブリブリ
って…
ブリリスケイフォリース
伯爵のことだな…。

知ってるの?
王都の北に住んでる
チンケな貴族家だ。
あいつと知り合いとは
知らなかったが…

なんかお母さんに
誘われたっぽいよ。
結婚相手を見つけて
もらうんだって。

その伯爵の交友関係は
分からないけど、
良い相手が見つかると
いいねぇ。
婿探し…?
あいつが……?
…………。
32ページ目
32

こ、この度は、
よ、よ、ようこそ
お越しく、く…
こちらこそ、
どうも
ありがとう。

えー、皆様、
少々お耳を
拝借!
まず私をご招待いただき、
発言の機会を下さった
伯爵夫妻に感謝の言葉を
申し上げます。
招待…?
したの…?
い、いや…?
してないけど…

あいつ…何を
企んでるんだ?

今夜私はある
重要な使命を持って
ここに参りました。
重要な
使命…⁉︎
一体
それは…?

私がここに来た
目的、それは…
33ページ目
33

我がタンポポ党の政策が
いかに素晴らしいかを
皆様にお伝えすることです。

34ページ目
34

30分後
…すなわちですね、
国民皆学とは……
全国に学校を建設する
ことが我が国の…

…これが
新しい……
…諸外国の状況を
見ても…

60分後
……要するに…
…ですから…
大変な困難が…
ということで…


90分後
…それが本当に
おいしくて……
…だから一度…
…興味を引かれて…
…つまり料理とは…
まさしく……

35ページ目
35

120分後
…というわけで、
皆様ご清聴ありがとう
ございました!
ダンスを再開
しましょう!

…もうほとんど
誰も残ってない
じゃないか。
せっかくの
舞踏会が…。
一体何が
したかったんだ、
あの人は…

37ページ目
37

嫌がらせの
ためだけに。
そんなに……
嫌いだったん
ですか、
私のこと。

だとしたら
おあいにく様。
どうせつまらない
舞踏会でしたし。
台無しに
してくれて、
むしろせいせい
してます。

そ、そうか…
そうだよな。
いや…

分かっていた。
お前が望んでここに
来たんじゃないって
ことぐらい。
はあ⁉︎
だったら
なんで…
38ページ目
38

ナオミ、
お前……
本当は人猫が
嫌いなんだろ?

⁉︎

その…お前は人猫の
世界で生きてるのに、
いつも威風堂々と
してるし……
人猫相手に
少しも物おじ
しない。
いつも進んで
私をかばって
くれるし…

39ページ目
39

それに、お前は
私が官邸に部外者を
入れたことを
とがめはしたが…
決して人間を
抱いていることを
馬鹿には
しなかった。
そんな
こと…

人猫との結婚なんて
したくない…
そうなんだろ?
私にはお前の
気持ちが分かる。
私たちは…
きっと同類……

40ページ目
40

いいえ。

ここに来たく
なかったのは…
本当にただ単に
つまらないから…
あなたを
守るのは、
それが仕事
だから…
…ただ、
それだけです。

だ、だが…
あなたと私は
同じじゃない。

人猫は
好きです。
良い相手がいれば
結婚したいとも
思っています。
44ページ目
44

…だったか?

副都にいた頃の
人猫の恋人の名前。
なん……で…?

さっき
お前の妹に
聞いたぞ。
結婚するつもり
だったが、うまく
いかずに終わった
らしい…と。
……あんの
おしゃべりな
クソゴミが…。

分かるよ……
なぜそう
なったのか。

お前はその人猫を
受け入れようとした。
でもできなかった。
…違う。

自分を責める
必要などない。
お前は何も
悪いことは
してないんだ。
45ページ目
45

歪んでいるのは
この世界の方だ。
私たち人間は
強要されてきた
だけなんだよ。

違う、
私は……
あんなおぞましくて
汚らわしい生き物に
愛情を注ぐことなど…

私は…
グーベンのことを
愛していた‼︎
48ページ目
48

…………。

そんなに…
そんなに大切な
人だったのか…
その人猫が…
悪かった。
お前の気持ちも
知らないで……
…そうだよな。
気持ち悪い
よな…人間が
相手なんて…

人間同士
なんて…
嫌だよな…。
