Amaitorte

全12話予定 R-15 

フェリスマンの国

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第6話 敗北の夜

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(1コマ目:雨雲に覆われ、薄暗い昼の空。ザアアア、という細い雨が王宮の空中庭園に降り注いでいる。)

第6話

敗北の夜

(2コマ目:王とサンドラは雨を避け、庭園の脇の屋内でテーブルを囲んでいる。)

副都に向かう
汽車は?

今日の午後に…。
この後、駅に向かう
つもりです。

(3コマ目:テーブルの上にはカップに入ったお茶と急須。)

そうか……。
副都サミットは
この大陸で最も重要な
国際会議の一つだ。

我が国の顔として
国際社会の表舞台に
立つことになる…
君にとっては初の
機会だな。

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(1コマ目:向かい合って座っている王とサンドラ。テーブルの上のカップを手に取る王。)

ホスト国として、
毅然とした態度を
崩さぬこと…

外国の連中に
臆する必要など
ないからな。

(2コマ目:サンドラはどこか上の空で、俯きがちに遠くを見ている。)

ええ…本当に。
責任重大……
ですね。

…………。

(3コマ目:心配そうにサンドラの顔を見つめる王。)

……浮かない
顔だね。

さすがに
不安…かな?

あっ…いっ、いえ。
そういうわけでは
ないんですが…。

(4コマ目:王はつらそうにカップに視線を落とす。)

私が一緒について
いってあげられたら
よいのだが。

副都は忌み地……
王家の者は足を
踏み入れることは
できない習わしでな。

すまない。

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(1コマ目:照れ臭く、申し訳ないような顔になるサンドラ。)

すまない
だなんて、
そんな…。

大丈夫だ。
君ならきっと立派に
やり遂げられる。

(2コマ目:王はニコニコと笑みを浮かべている。)

なんせ君は私の
自慢の総理大臣
だからね。

(3コマ目:屋内の窓から見る雨模様の空。)

…お心遣い、
感謝いたします。
陛下。

(4コマ目:王宮の階段を一人で降りていくサンドラ。)

(5コマ目:近付いてきたサンドラに気づき、横目で振り向くナオミ。)

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(1コマ目:階段を降り終えナオミと合流しそのまま歩き続けるサンドラ。)

駅に行くぞ。

はい。

(2コマ目:二人はお互いに視線を合わさない。ナオミは気まずい表情を浮かべ、先頭を歩くサンドラの表情は硬く、感情は読み取れない。)

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(1コマ目:ナオミが王都に戻ってきたときに通ったのと同じ、大きな駅舎の正門。中央の階段は貴賓客のために空けられ、到着した総理の馬車の両脇には多数の人だかりができている。)

あれからまだ、
お互いの顔をまともに
見れていない。

(2コマ目:群衆が近づかないように一列になってガードしている騎士たち。その隙間から、密集した人間や人猫が満面の笑顔でこちらに熱い視線を注いでいる。)

(3コマ目:サンドラの横で傘を差している副部長。背後でサンドラの様子を見ているナオミ。サンドラは先ほどまでの憂鬱さを微塵も見せず、政治家スマイルで支持者たちに向かって手を振りながら歩く。)

(4コマ目:サンドラの後ろ姿。ナオミからはサンドラの表情は伺えない。)

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(1コマ目:駅のプラットフォーム。駅員に見送られながら列車に入っていくサンドラ。ナオミ、ベルプルがそれに続く。)

(2コマ目:それは望遠鏡から見た光景だった。駅の様子を何者かが遠くから監視している。)

見つけたぞ、
総理大臣だ!

(3コマ目:草木に身を隠したフードを被った二人組の人猫。)

今、ちょうど
列車に
乗り込んでる!

列車番号は
見えるか?

(4コマ目:望遠鏡を覗き続ける人猫の返答を聴きながら、背後のメガネをかけた人猫が手帳に文字を書く。)

AT…092…
101号だ。

よし、メモした。
俺はこの情報を
伝えてくる。

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(1コマ目:プラットフォームからの景色。客車の屋根とプラットフォームの屋根の間から見える遠くの山の中腹で、一瞬何かがきらめく。)

(2コマ目:列車に乗り込む寸前、山の方に目をやるナオミ。)

ん?

(3コマ目:山を眺めるも、そこには何もない。)

今何か…

……気のせいか。

(4コマ目:列車にぞろぞろと乗り込んでいく警備部の新人たち。)

(5コマ目:列車内の通路。背後からナオミに話しかける副部長と、窓の外を見たまま振り向かずに答えるナオミ。)

警備部長、
全員乗車完了
しました。

よし、
発車を
許可する。

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(1コマ目:ドドドド、と森の中を駆ける馬。またがっているのは先ほどのメガネを掛けた人猫だ。)

(2コマ目:馬が辿り着いたのは、山の中にぽつんとある建物。五角形で三、四階建て程度の高さの塔で、五つの面それぞれにはてっぺんの階にだけ大きな全面ガラスが付いている。一階部分は広く、地面と地続きで馬がそのまま入れるようになっている。)

(3コマ目:建物の中。馬を繋ぎ、フードを脱いだ人猫は事務員風のスーツを着ていた。)

(4コマ目:窓に囲まれた室内。そこには椅子に座った人猫が、机の上の書類の束に鉛筆を走らせながら、片手で巨大な樽のような形をした機械のレバーを操作している。疲れた様子のその人猫の背後からメガネが近づく。)

お疲れ様
です!

おう、
ちょうどいい
ところにきた。

ちょっと
休憩してくるから
代わってくれ。

(5コマ目:メガネの人猫が不気味な笑顔を浮かべる。)

はい、
先輩。

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(1コマ目:もれる〜、と言いながら走り去っていく先輩。代わりに椅子に座るメガネの様子を、部屋の中に数人いる事務員は気にする様子がない。)

(2コマ目:スッ、とメモ帳を取り出すメガネ。)

(3コマ目:ガチャ、という音を立てて大きな樽のようなものの蓋のシャッターが開き、中から強烈な光が放たれる。樽とは信号灯だった。)

(4コマ目:ピカ、ピカ、ピカ、と、規則正しく光る信号灯。その光は窓の外に向けられている。)

(5コマ目:そこは山のてっぺんだった。塔からは引き続き、ピカピカと信号灯の眩い光。)

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(1コマ目:副都方面の風景。ポッポーと汽笛を鳴らしながら線路の上を走る角ばった形の蒸気機関車と数両の客車。街を背後に、汽車の行く方向には山や森が広がっている。)

さようなら、
人間の総理大臣。

(2コマ目:列車の中。大勢の人猫の騎士たちがボックスシートにぎゅう詰めになり、にこやかに談笑している。)

(3コマ目:騎士ばかりの車両の通路を、無表情にあたりを見渡しながら進んでいくナオミ。)


にん げん      そう  り  だい じん

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(1コマ目:列車内のコンパートメントが並ぶ車両の廊下。数人の騎士が立ったまま警備をしている。ナオミは一つの扉に向かって進む。)

(2コマ目:ガラッと扉を開けるナオミ。)

(3コマ目:広々としたコンパートメントの中でポツンとシートに腰掛けているサンドラがナオミに振り向く。)

車内に異常は
ありません
でした、総理。

(4コマ目:無表情のまま視線を落とすサンドラ。)

そ、そうか。

(5コマ目:対面のシートに腰を降ろすナオミ。)

………。

…副都へは
5時間ほどで
到着します。

今夜は
副都総督との
ご会食の予定が。
その後、明日から
始まるサミットに
備えて……

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(1コマ目:手を上げて静止のポーズをし、うんざりした顔になるサンドラ。)

予定ぐらい
分かってる。
何度も説明して
くれただろ。

そ、そう
ですね。

(2コマ目:向かい合って座ったままの二人。コンパートメント内に沈黙が流れる。)

…………。

(3コマ目:居心地の悪そうな顔を浮かべて視線を合わせない二人。)

ああ、
気まずいな
……。

(4コマ目:速度を上げて森の中を進んでいく列車。)

……早く副都に
着かないだろうか。


 き

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(1コマ目:コンパートメント内で時間を潰している二人。)

(2コマ目:ナオミはどこから持ってきたのか、小さな文庫本のようなものを読んでいる。)

(3コマ目:サンドラは茶を飲みながら窓の外の風景を眺めている。)

(4コマ目:誰にともなく呟くサンドラに反応したナオミが顔を上げる。)

……田畑
ばかりだな。

はあ?

(5コマ目:外を見たままのナオミの横顔。その表情はどこか憂いを帯びている。)

王都のような
都市部は
ほんの僅かだ。

国土の大半は
森や荒野…

その合間合間に
農村が広がって
いる。

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