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ナオミとサンドラは地面に寝そべったまま、静かに身を寄せ合っている。お互い赤くなったままうっとりと見つめ合う二人。周囲には小型やナオミの刀が散らばっている。たき火は燃え続けているが、先ほどよりも少し落ち着いている。
…好いなと
思っていた。
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照れくさそうに目を細め、サンドラを見つめているナオミ。
最初、あなたは
私のことを
騎士のコスプレだと
思ってたんですよね。
同じく目を細めてうっとりしているサンドラ。
ああ、まさか
人間の騎士が
本当にいるとは
知らなくて……
前任の警備部長と
一緒にいる
お前を見て
心底驚いたよ。
少し悔しそうな顔になり、目を閉じるナオミ。
…私もあのときは、
あなたをパーティの
来賓の連れ人だと
思いました。
そうだった
のか。
だから演説が始まって
驚いた……
総理大臣は人猫だと
思い込んでましたから。
何かに気づいたかのような、悲しげな表情で目を見開くサンドラ。
私たちはお互い、
自分の種族に対して
偏見があった
みたいですね。
再度少し目を細める。
…………。
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目をうるめ、静かに涙を流すサンドラ。
あのとき……
お前に確認もせずに…
勝手にキスして、
すまなかった。
その様子に少し驚き、見開かれたナオミの目。
ぼろぼろ泣きながら強く細められるサンドラの目。
自分が一番よく
知っていたはず
だったのに……
無理やりそういうことを
されるのが、どれだけ
怖いことかなんて。
私もあいつと
何も違わない…。
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ナオミの右手がサンドラの頬に触れ、指で軽く涙を拭う。
怒る資格なんて
ないのに、
お前に当たったり
して……
自分の唇でそっとサンドラの口を塞ぐ。
もういいです、
あのときのことは。
二人とも目を閉じている。
すまない、
ナオミ……
どこまでも漆黒な夜の森の空。
あの日のことは
忘れます。
すまない、
すまない……。
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消え掛かった焚き火。微かな赤い光と立ち上る白い煙。
寝ている二人。ナオミは仰向けに、サンドラはそれを抱き抱えるように横を向いている。
二人の傍にいつのまにか誰かが立っている。明るい金髪をお下げにした眼鏡を掛けた人間だ。サンドラの学生時代の旧友と同じ学校の制服を着ている。
気持ち悪い。
眠そうな目を開くサンドラ。サンドラは眠っていなかった。