全14話 R-15 2006-2011 完結済

グレー・ワールド

第4話 記憶

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グレー・ワールド

第4話 記憶

猫分儀スミレ

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ウィスティ!

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そうだ…メリッサと私は、
ずっと昔から友達だった…

時は過ぎ…

いつからか、私は人と話す
ことが出来なくなっていた。

まだ、声が出ないままなの?

……………。

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…………

ねえ、ウィスティ。あなたに
「手話」を一つ教えてあげる。

こうして…

こう!

これが、あ……

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あれは…

あ、ウィスティ様
おはようございます。

メリッサ、これってどういう意味?

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え…何です、今の。

私、思い出した…。これは、
あなたが昔教えてくれた手話。
覚えてるでしょ?

「手話」って何ですか?

知らないの?

ええ…
申し訳ありません…。

なぜ?

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やっと、昔のことを
少しだけ思い出した
と思ったのに。

あれはただの夢だったのか?
メリッサが嘘を言ったのか?
 それとも…

着きましたよ、
ウィスティ様。

呪文局

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…では、またの
お越しを、大臣殿。

ええ、
ごきげんよう。

局長さん!

げっ、メリッサ!
それにウィスティ様も…

こんにちは。

なに驚いてんの。あなたが
呼びつけたんでしょうが。

そ、そう
でしたな…。

ではこちらへ。
呪文局へようこそ!

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その名の通り、呪文局は言の葉…
情報の管理や保管が主な業務です。

各種文献、詩面や公文書…

そしてこれが我々の管理する、最も
大切な物の一つ。地下図書室です。

それで…どうして
私がここに呼ばれ
たんですか?

ええ、実は図書室へ
の扉には封印がされて
いまして。

クネノマヤ王族にしか解くことの
出来ない、封印の呪文ですね。

つまり、私にしか扉を
開けられないってこと?

そういうこと
です、殿下!

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本来、毎年一回
扉を開いて大掃除
をするんですが…

他に王家の方はいらっしゃ
らないし、ここ何年も扉を
開けられなかったのです。

もうどれだけ汚れて
いるやら!想像し
ただけで恐ろし…

いいから、
早く扉を開け
ましょうよ。

おっと、そうでしたね。
ではウィスティ様、
ここに書いてある呪文を!

これを、読めばいいんですか。

はい。

ナココ・オリバト・キラヘ

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さぁ、お掃除部隊
かかれー!

私も、中を
見ていい?

ええ、
もちろん。

結構長い階段だな…

!?

すごい…こんな大きな部屋が
地下にあったなんて…。

ええ。

呪文局の敷地を超え、街の
地下全体へと広がっています。
この大図書室はまさに…

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国家の記憶の
中枢なのです!

ウィスティ様、迷子に
ならないで下さいよ!

はーい。

あ、ウィスティ様。
青色の棚の本には
お手を触れないよう。

とても気化
しやすい記録が
ありますから!

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………

広いなぁ…本当に
迷子になっちゃいそう。

どこからか
文字が…

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この本だ。

先ほど申した通り、
青い棚の本は文字が
気化しやすいんです。

いや、あの、その、
ごめんなさい!

ああ、
いいんです
いいんです。
一冊ぐらい。

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開いたら消えてしまうんだから、
そもそも読めやしないのです。
おかしいと思いませんか、
そんな本にも本棚があるのって。

失う一方の記憶にも居場所
がある…それってどんな
意味があるんでしょうね。

……

!?

何だろ…?
水たまり?

さらさらしてる…
これ、水じゃない。

そうか…
これは記憶だ。

え?

空気中に溶けた文字、
つまり「記憶」が
結露したのです。

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そして滴となった記憶は
集まって水たまりへと

…………

すごいよガネジリさん。
 水みたいなのに
 全然濡れない!

はしゃぎ過ぎると
転びますよ。

大丈夫、大丈夫。
もう子供じゃ
ないんだから…

わっ!

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……!?

扉?

わっ

わわ!!

…!

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はぁ…

はぁ…

うぐっ
 ぐうっ

ぐはっ!

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ぶはっ!!

げほっ

げほっ

ウィスティ様、
大丈夫ですか。

うん

下に…扉があった。

扉?

はて、こんな
所に扉はなかった
はずですが…

もう、心配
させないで下さい!

この水たまりを乾かして
後日調査を行いましょう。

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………

腕がどうか
されましたか?

い、いや
別に……。

そうだ、アイスクリームを
買ってきましょうか。近くに
おいしいお店があるんです。

その辺にSPもいるし
平気ですよ。

あ、でも…

一緒にいて
ほしいんだけど…

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こうして、こうか…

どういう意味なんだろう…

…ひとつ教えてあげる。

こうして…こう!

これが、あ…

「これが、あ…」?

これが、あ…
 あ……あ……

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あなたの名前

…え?

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「ウィステリア」

あなたの名前…

そうだ、
あなたが…

私に「手話」を教えて
くれたのは、あなた…?

そう、そうだよ、ウィスティ。

メリッサ、なのね…

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ちょ、
メリッサ
苦しい。

ご、ごめん。

でも、どうして?
ていうかこの姿…

うん。

話すよ、全部。話したい
ことがたくさん…

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……?

どうして、
泣いてるの?

え…

あはは、なんでだろ。
涙が止まんないや。