全14話 R-15 2006-2011 完結済

グレー・ワールド

第6話 アクセプト

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グレー・ワールド

第6話 アクセプト

猫分儀スミレ

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…………

…あれ?

何か違う…?

何が違うんだろう…

科学省

新鮮な魚は
いらんかえー

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ジョセ、怪我の調子はどう?

ありがとう

うん、実はまだ気絶した
前後の記憶がなくてな…

アミトエナの怪物に
ぶん殴られたんじゃないかー

うーん、
そうだったっけなぁ…

さて、本題なのですが…

ウィスティ様、もう一度あの
地下大迷宮の探検にご参加下さい。

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ダメですよ!あんな危険な
所にまたウィスティ様を
お連れするなんて!

リスクはわかります!

ですが、迷宮には封印
された扉が多数。探索の
続行には殿下のご協力が
必要不可欠なのです!

そんなこと言って、ウィスティ様の
身に何かあったらどうするんです!

しかし、あれは大変な科学的発見なの
です!何が何でも探索をしなくては!

メリッサ、私は別に…

ウィスティ様

私たちからもお願い。

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ウィスティ。

私たちと一緒に、
地下迷宮に来て
ちょうだい!

………!!

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私たちは、この街の地下に
君の記憶喪失の謎が隠されて
いると考えている。

あの迷宮の中を探れば
君の記憶を取り戻す鍵が
見つかるかもしれない。

どうして地下迷宮と私の
記憶が関係あるんですか?

そうだ!ウィスティ様のこと
と、あの迷宮は関係ない!

この世界が、
君の夢だからだ。
ウィスティ。

クネノマヤは、私の
夢なんかじゃない!

教授…

ま、まぁ
聞いてくれ。

君はあの迷宮に近づいたとき、
失われていた記憶に予期せず
出会ったことがあるのでは?

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……!

…迷宮の入り口に溜まっていた
「記憶」に触れたとき……
私は何かを見ました。

誰かの腕……それに
刃物が見えた。
そして……

……恐らく、それは
君自身の記憶だろう。

この世界は、君の夢…
いや、君の心そのもの
だと言った方が正しい
かもしれない。

だからこの世界の
どこかに、失われた
記憶が隠されて
いるはずだ。

記憶喪失というのは、記憶が
消えてなくなるわけじゃない。

記憶はどこかにちゃんと
あるけど、それを見つける
ことが出来ないだけなんだ。

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「記憶」が迷宮の入り口に水の
ように溜まっていたのは、恐らく…

迷宮の奥底に眠る記憶の断片が
吹き出してきていたのだろう。

それで、迷宮を探索して
記憶を見つければ、私は
全てを思い出す…と?

そういうことだ。

私……私は嫌です。今までに触れた記憶は
恐ろしいものばかり…

私は今でも
十分幸せです。

昔の記憶なんて取り
戻したくありません。

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…うむ、わかった。君が望まないなら
これ以上「記憶」に触れる必要は無い。

でも、迷宮の探索だけは
協力してほしいんだ。

いいえ、殿下はご協力いたしません。
あそこは危険が大きすぎます。
殿下自身も反対されていますし…

実は……私たちは、とても
困ったことになっているのだ。
ウィスティ、君の助けが必要なのだよ。

どういうことですか?

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他者の夢に侵入し、眠っている
人の心を探ることが出来る機械!
今こうして私たちが君の夢の中に
侵入するために使っている装置!

私たちが “EREBOS” と
呼んでいるものだが…
これを発明したのは
君のお父さんなのだ。

その話は、メ…メリッサ
から聞きました

うむ…君のお父さんは、天才的な
科学者だった。私はかつて彼と共に
EREBOSの研究をした仲間だったが…

基本的な設計や理論は全て
彼一人が作り上げたのだ。

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彼が去って以来、この発明に
関する一切の権利は…

娘である君の物となったのだ。

EREBOSの所有者は
ウィスティ、君だ!

私が、所有者…?

そうだ。つまり、この発明は
お父さんの遺産なのだ。

しかし!今君は
昏睡状態にある。

もしずっとこのままの
状態が続けば、
君は遺産の相続権を
失うことになる…。

私、お父さんの遺産
なんて要りません…

外の世界の物は何も…

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君がそう思うのはわかる…

しかし、どうしてもこの
「遺産」を君に受け継いで
もらわなければ困るのだ。

私たちが作った装置…EREBOSは、
素晴らしい発明であると同時に
とても恐ろしい技術でもある!

EREBOSを使えば、我々の意識を
相手の夢の中に送り込むことが出来る。
そこで剣を振るい「悪夢」を退治すれば…
心の病を治す、画期的な精神医療となる。

しかし、剣の矛先を夢の住人、
夢の世界そのものに向ければ……

相手の心、人格そのものに
ダメージを与えることも出来るのだ!
心を思うままに改造することや
破壊し尽くすことさえ可能なのだ!

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……。

君がお父さんの最後の家族なのだ。
君が昏睡状態を抜け出せなければ…

EREBOSの権利は、君でも私たちでもない、
第三者の手に渡ってしまう。
悪意を持った人間がこの装置を手にすれば…

そう、外の世界には
この装置を悪いことに使おう
とする者共がいるのだよ…。

そんな…

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今すぐ目を覚ましてくれ
とか、記憶を取り戻して
くれとは言わない…

でも私たちは、あなたの記憶喪失
の謎だけでも解き明かしたいんだ。
だからお願い、協力して!

……

わかりました。

ウィスティ様…!

皆さんと一緒に
地下迷宮に行きます。

おおっ!
ありがとう
ウィス…

よく言って下さいました!
ウィスティ様!

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みなさんの話はサッパリわかりませんが、
古代遺跡にロマンを求める心は同じ!
なにとぞよろしくおねがいしますぞ!

待て、アレックス!

思い出したぞ!俺に岩をぶつけたのはお前か!

さあて、何のことかなー!

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局長、あんまり飲むと
お身体に…

うるせー!

ガネジリさんどうしたの?
なんか荒れてるね…

なんでも失恋された
とかいう噂ですよ。

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しかし…先程の話、
無理に受けなくても
良かったですのに…

ううん

私はただ、みんなに
好きなことをやって
いてほしい。

私がいないと
出来ないことなら
私がやらなきゃ…

ウィスティ様は
人に気を使い過ぎだと思います!
食事だって私がお作りしますのに、
その辺で済まそう…だなんて。

そ、それは
いいのいいの!
マジで!

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あなたはクネノマヤ国王
の娘にして後継者、
ウィスティ王女様です!

あなたは今、夢を見ているの

どうしてもこの「遺産」
を君に受け継いでもら
わなければ困るのだ!

…………。

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あ……

──なんてことがあってさ

あはは

…ねぇ、メリッサ

ん?

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私は……どうしても
メリッサ達のお話が信じ
られないの。この世界が
本当に私の夢なのか…

………。

これが夢だとしても…それは
私の夢ではないのかもしれない。
私は誰かの夢の登場人物の一人
でしかないのかも……

だとしたら、私はメリッサが思って
いるような人じゃない……。私は
私でしかないんじゃないかって。

ウィスティ、あなたは…

あなたは、私の知ってる
ウィスティだよ。間違いない。

あなたも、私のこと
がわかるでしょう?

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………。

さっき、あのおじい
さんが言ってたけど、

外の…あなたの
世界には……

私のお父さんとお母さん
はもう、いないのね…。

………ええ、
亡くなられてる。

交通事故でね。

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私は……

そのとき決心したの。

私が、ウィスティを
守ってあげるんだって。

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でも、その時はどうしていいかわからなくて。
色々格闘技を習ってみたり……
けんかには強くなったけどね。

馬鹿な子供だった……
結局、あなたを守ること
は出来なかった。

あなたが橋から
飛び降りた時、私…

私はそんなこと、
してない…

あ、いや…

ごめん。その…
そんなつもりじゃ…

ううん、いいの。

ありがとう…。

………。

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その後…メリッサは
どうしてたの?

勉強してた。

あなたを…助ける力が欲しかった。
だから、私は臨床心理士に
なろうと思った。

その甲斐もあって…今、私は
EREBOS研究チームの一員。
まだ本物の心理士じゃないけど…

でも、どうして……?
なんで、私なんかのために…。

え?

なんでって…

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……うん。

どうして…
…かなぁ。

……ウィスティ?

私ね、昔のことは
ほとんど何も
覚えてなくて…

今でもわからない
ことだらけで……

でも、メリッサが
いてくれるから…
私は平気なんだ。

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あなたのことは、覚えてるから…
私は自分を見失わないでいられる。
だから…私、嬉しいんだよ。

ずっと一緒にいてくれて…。
あなたにとっては、とても
長い時間だったんだよね?

メリッサ…
ありがとう。

ちっ…

違うよ、
そうじゃない。

私が待ってたのはね…。

こう……

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……え?

あ…

あ、いや……その
違うんだ。

…ごめんなさい。
わかんないよね、
こういうの…

うん……
わからない、私には…。

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あの、メ…

メリッサ!

私、嫌じゃないよ…。

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そうよ、あなたは野蛮な人間…

本当のあなたを知ったら、彼女は
きっとあなたを嫌いになるわ。

………

私は……

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あ……待って!

……

メリッサ…

ふふふ…そうよ。
あなたの本性は……

…………

あなたはまだ忘れた
まま。あなた自身を。

私自身…。