第1章 飛べない小鳥
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アリス・シャーロック
ルビー色の星雲
猫分儀スミレ
NEKOBUNGI SUMIRE
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バーナード様……
本当に行ってしまわれるのですか。
ああ……すまない、
ネリー。
私も辛いが、しばしの別れだ。
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こっそり君に
貸してもらった本……
お返しするよ。
まぁ、もう読んで
しまったのですか。流石ですわ、
外国語もお得意なんですね。
………………。
きっとすぐに戻ってくるよ。
君に会いにね。
いいかい、ネリー。
この部屋での出来事は……
はい、バーナード様。
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二人だけの秘密に……。
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どうでしたか。
うまくいきましたか?
ああ。私のことを
すっかり信じきってる。
あの娘から秘密が
漏れることはないだろう。
それに、情報の裏も取れた。
すると、やはり……。
うん。行き先は決まった。
また大西洋の向こう側に戻るぞ。
ALICE SHERLOCK
THE RUBIOUS NEBULA
CREATED BY NEKOBUNGI SUMIRE
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3週間後 ──
イングランド・ロンドン
そうはさせないぞ、
エッグノッグ伯爵!
お前は……
秘密探偵メール・ブランク!
ブランク!
助けて!
どうして
この場所がわかった。
正義のスパイ探偵、
メール・ブランクに
不可能はないのさ!
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ここまで辿り着いた
勇気は褒めてやろう。
ここは吾輩のアジト…
そしてメール・ブランク、
お前の墓場でもあるのだ!
死ね!
CHAPITRE I
“LE PETIT OISEAU PERDU”
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あ、アリスさん
じゃないっすか。
いらっしゃい。
それっすか。確か昔の
テレビアニメっすよね。
またお子さんに
お土産っすか?
とりあえず中にどうぞ。
今日は通りかかった
だけですから……
また今度。
今の誰?
よくアニメの
DVDを買いに来る
お客さん。
つい見とれて
しまった……
家に帰れば
DVD全部あるのに。
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お子さんにお土産……
ってどういう意味だ?
もしかして、
子供がいるような
年齢に見えた?
いや、実際そんな
年齢なのは間違って
ないけど……
それにしても、
なんで店頭であのDVDを
流してたんだろう……
今更宣伝したって
手遅れなのに……
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ちょっと君。
何やってんの
かな。
げっ⁉︎
邪魔すんなよ
ポリ公。
公共の建物への
落書きは
立派な犯…
うるせぇな。
あっち行けババァ。
いてててて!
あにしやがんだ!
このクソガキ!
ちょっと署まで来い!
離せー!
横暴だ横暴!
おう、
お巡りさん。
うちらの連れに何か
ご用ですかいのぉ。
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は、はっはっは。
いやいや。
私はこの坊やに
少し話があった
だけで……
あ、逃げた。
あーん、もう。
バカ、バカ!
何逃げ出してんの!
落ち着いて堂々と
対処しなきゃ
いけないのに……
これじゃ警察官
失格だよ……
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ん?
な、何?
待てーっ!
オット、コリャ
マズイ。ツカマッタラ、
オワリダ。
コノ キミツショルイ ヲ
ミセルワケニハ……
え?
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あわわ……
すいません!
何するんですかー!
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あ……あの鳥を
捕まえようとして…
ああ、でも網が…
籠も……
でも早く捕まえ
ないと、大変な
ことに……。
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お、お巡りさん⁉︎
ご安心を!
詳しい事情は
知りませんが、
私に任せなさい!
そこの鳥!
待ちなさい!
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お巡りさーん、
大丈夫ですかー?
なんの、
心配ご無用!
えい、逃さないぞ!
あ、アリス先輩だ。
ほんとだ。こん……
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ごめん、
少し借りる!
えっ?ちょ、
ちょっと!
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そうはさせるか!
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ん?
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え?
ペット?
実にすばしっこい奴で。
餌をやろうとした隙に
うっかり……。
窃盗犯とか
企業スパイとか…
そういうんじゃ
ないんですか?
え?何言って
るんですか?
何か、機密書類が
どうのこうのとか
言ってましたが……
ああ……あいつは
オウムの一種
ですから。
多分テレビか何かの
台詞を真似して
喋ってたんです。
……………
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お巡りさん、あの鳥は
是非見つけてください!
頼みます!
首都警察 メイ・ヘア警察署
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替えのシャツ、
あってよかったですね。
あー、本当。
アリス先輩、
ドジなんですから
屋外で暴れないで
下さい。
大きなお世話。
これ、
お願いします。
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ふむ……強盗……
ヨーク街で……
あれ?この束、
ひと月も前の書類
ばかりじゃん!
知りませんよ。
私の所に回って
きたのが今日
なんですから。
全く、街ではこんな沢山
事件が起こってるのに……
警察官の手は
全く足りて……
足りてないだけ……。
いや……うん、足りて
ないだけだと信じたい。
……検討されている
航空規制法案は内部の
反対意見が多く……
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あんたさ、仕事に
不満はないの?
またそのお話ですか。
私は別に。
私達ってさ、
ちゃんと市民の役に
立ってるのかな。
警察官はさ、事務仕事ばっか
じゃなくて、外で犯人を
追いかけてナンボじゃない。
デスクワークも警察官の
大切な仕事ですよ。
人にはそれぞれに適した役割
ってものがあると思いますよ。
慣れない事はしないで下さい。
それでは次の
ニュースです。
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連続窃盗犯「怪盗アーセニウス」
が博物館の展示品を盗み出すという
犯行予告を行っていた事が判明。
予告声明を受け取ったのは、先月
サザークにオープンしたばかりの
「ティラミス恐竜博物館」で……
標的となっているのは
「ウルフォーゲルのオーブ」
と題された美術工芸品です。
鳥の像がレーザー刻印されている
直径20センチメートルほどのルビーで、
同博物館がオープン記念として特別に
展示しているものです。
首都警察の発表によると、
犯行予告を行っているのは
「怪盗アーセニウス」と
呼ばれる国際的犯罪者です。
アーセニウスは十年ほど前から
欧州各国に出没している犯罪者ですが、
正体は未だ謎に包まれており……
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へー!
すごいなぁ。
予告された犯行時刻は
今夜で、警察は既に博物館
周辺に緊急配備を……
川の向こうだけど、
手伝いに行きたいなぁ。
ねぇ、巡査。
巡査?
あれ、もう
いない……
…………。
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………それで
川にドボンだって。
マジウケルー。
ほんと、あの
オバサン…。
あっ。
いつまで続くのかな、
こういう生活……。
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夜のパトロールに
行ってくる。
ほどほどに
して下さいよ。
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この辺だったかな。
あの鳥を逃したのは……
いや、いるわけないか。
もう何時間も
経ってるんだし……。
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はぁ……。
……ん?
31ページ目
32ページ目
天使…?
なんだ、パラ
シュートか……
あなた!
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一体、どこから……
なっ…⁉︎
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あわわ……
危ない!
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なにこれ……
飛行船⁉︎
怪我はないか?
あ、いや……
君、ここから早く
逃げ……
いや、頭伏せて!
え?一体
何を……
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二人とも、
そこを動くな!
ひぃっ!
随分早く現われたな。
どこの組織だ?
へっ。それは言え
ねぇのがお約束さ。
銃を捨てろ。さもないと、
このカバンの中身を川に
投げ捨てるぞ。
ああ、どうぞ捨ててくれ。
この状況じゃむしろ
好都合ってもんだ。
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……‼︎
そういうことか。
やっぱりあの魚は……
あれ?
ない、ない……
おい、そこの黒服!
何してる!
ひっ!
今だ!
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チッ!
39ページ目
キャー‼︎
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くそっ……
もう警察が……
一時退散だ。
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大丈夫、ここ
まで来れば……
死ぬかと思った……
さっきのは一体……?
あなた!
しっかり…
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この人………よく見たら
まだ子供じゃない……。
血が出てる!
さっき被弾したんだ……
こうしちゃいられない、
早く病院に行かなきゃ!
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そこのタクシー
運転手!
んあ……え⁉︎
警察の者だ!
ドア開けなさい!
大丈夫、大丈夫。
もう命に別状ない
からね。
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モースタン先生、
ありがとうございます。
なぁに、銃創の手当て
なんて朝飯前さ。こんな
のは慣れっこだからね。
さすがは
元軍医さん……。
先輩、お疲れでしょう。
報告書の方は私が
書いておきますよ。
助かるよ!
もう大好き!
グニャ!
抱きつかないで下さい、
気持ち悪い!
被害者の名前は
分かりませんか?
さぁ……
通りすがりに見つ
けただけだから。
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カバンに何か身分を示す
物があるかもしれません。
この際なので見て下さい。
了解。
この少女、一体
何者なんだろう。
手がかりがあれ
ばいいけど……
これは……
水晶玉……?
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さもないと、このカバンの中身
トルほどのルビーで
予告された犯行時刻は今夜
博物館の展示品を盗み出すという
盗アーセニウス」と呼ば
川の向こうだけど、手伝いに行きたいな
正体は未だ謎に
飛行船⁉︎
アーセニ
先月サザークにオー
直径20セ
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先輩、どうですか?
い、いや………。
うーん、そんなような
ものはないようだ……。
そうですか?
その方を保護した
場所はどこです?
ラン………
いや、ヘイマ……
じゃなくて。
グローブナー公園の
近くだったかな……
……なぁんだ、
そうですか。じゃ、
全然逆方向ですね。
え、何が?
先輩がパトロールに出ていた
時間に、川の方で火事が
あったらしいんですよ。
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すごい騒ぎだったそうで、
もしかしてそちらに行ったの
かと思ったんですが……
し、知らなかったなぁ。
はは、ははは。
それじゃ、私はお先に。
ああ、眠い……。
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まさかと思ったけど、
この色、この形……
テレビのニュースで
見たのと同じやつだ……。
台座は無いが…
間違いない!
恐竜博物館にあった
「ウル…何とかのオーブ」 だ!
すると、もしかして
この少女が……
あの有名な
アーセニウス……⁉︎
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……いや、そんなはずないか。
この子はせいぜい十代後半……
アーセニウスは十年も前から
活動してるんだ。
この子は奴の手下で
盗品の運搬役、
といったところか……
ん、うぅん…
……………。
しかし、改めて見ると
整った顔立ちだなぁ。
肌のキメも細かくて……
……いやいや、そんな事を
考えてる場合じゃないぞ!
仮にもこの女は犯罪者……
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そうだ、こいつは泥棒の一味だ。
今のうちに手錠を掛けておくか?
いや、待てよ……
そんな乱暴な事は出来ない。
相手は女の子だし、怪我人だ。
いや、しかし……
うぐ…!
アイ…。
あ、気が付いた?
大丈夫、無理は
しないで……
ウィス、
イジュ……?
エスク……
パーリヴ
オングレ?
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ああ、そうか。
アーセニウス……
来てくれたんだね。
んっ……⁉︎
寝ぼけてる……?
…………。
やはりこの少女……
アーセニウスの関係者
と見て間違いないな。
え?何?
今何て言った?
………。
53ページ目
TO BE CONTINUED...