全8章 R-12 2011-2016 完結済

アリス・シャーロック:ルビー色の星雲

第8章 鳥籠は開け放たれた

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​CHAPITRE VIII

​“LA CAGE A ÉTÉ OUVERTE”

​はははっ。
とうとう現れたな。
アーセニウス!

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​これは意外だな。
かの有名なアーセニウスが
こんな小娘だったとは。

​うーん………?
あの顔、どこかで
見たような……

​さぁ、約束通り
ウルフォーゲルのオーブを
返してもらうぞ。

​マリー……。

​ああ、返してやろう。

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​お前たちにこれの
価値が理解できるのなら。

​な、なんだそれは?

​私が作った専用の
暗号変換機だ。

​何、この短期間で
もう解読法を
見つけたのか?

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​取れ。

​オーブの情報は
貴様らにくれて
やろう。

​…………。

​どうした、
ぐずぐずするな。

​命懸けで奪った
お宝を易々と……

​マリー、一体何を
考えてるの?

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​オーブは渡したぞ。
人質を解放しろ。

​ご苦労だったな、
アーセニウス。

​だが、今この場で
オーブの中身を確認
する必要は無い。

​世間知らずのバカガキめ。
私たちの顔を見たお前らを
無事に帰すと思ったか。

​二人ともここで
死んでもらう。

​やっぱそう
ですよねー……!

​…………ふっ。

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​悲しいな……

​殺せ!

​わっ!

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​ひるむな、
撃て撃て!

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​……や、
やったか?

​死体が
ないぞ!

​おい、奴は
どこへ消えた⁉︎

​バカモン、
小娘一人に何を
手こずってる!

​さっさと探して
殺してこい!

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​どこに潜んでるか
分からんぞ。

​手分けして
探すしかない。

​二人ここに残れ。
他は北側と南側に
別れて散開!

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​さて、電源
スイッチは
どれだ?

​これか?

​おおっ。

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​何だ?
この音は……

​い、いた!

​‼︎

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​あっ!

​うぐっ!

​な、何だ……⁉︎

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​ひ、ひぃ!

​お、おい、
何があったんだ?

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​中央情報局の
ジャイロキューブだ!

​何だそれ?

​コンピュータ制御の
自動照準器だ!

​あのコソ泥が
なぜそんな代物を
持ってやがる⁉︎

​知るか!
とにかく背後に
回り込むんだ!

​奴の正面に
出たら一瞬で
殺られる!

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​無駄だ。

​どこへ隠れ
ようとな。

​……よし、
あっちか。

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​後ろを
取ったぞ。

​今だ、
撃て!

​気付かれて
いたのか⁉︎

​は、走れ!

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​よし、よし……
いいぞ!

​データが
読み込まれている!

​な、なんだ……?
このデータは
一体……?

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​くそ、状況がわからない。
一体何が起こってるんだ?

​お、おい!
あそこにいるぞ!

​やっと
姿現し……

​うわああ‼︎

​マリー!

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​待ってろ、すぐに
手錠を外してやる。

​お、おい!
人質が……

​お、おう!

​外れた!

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24ページ目

​あっちへ
逃げたぞー!

​追えー!

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​マリー、私……

​いいや、アリス。
私の方こそ……

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​お腹の怪我は
大丈夫なの?

​平気さ。

​もう敵が
来るよ。

​私が奴らを引き
付ける。君は
その隙に逃げろ。

​あなた一人残して
なんか行けないよ!
私も一緒に……

​わがまま言うな、
アリス。ここは
危険なんだ。

​もう危険なんて
恐れない!

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​逃げもしない、
そう決めたんだ。

​私も戦う。
あなたのため
なら……

​…………。

​……わかった。

​私は残りの敵を倒して
オーブを取り返す。
援護してくれ。

​うん。

​あ、ちょ…

28ページ目

29ページ目

​く……くそ、強い!
なぜ俺たちの動きが
読まれてる?

​あいつの武器は
ジャイロキューブ
だけじゃないのか?

​わからん……

​まるで天から
全てを俯瞰している
みたいな……

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​な……何だ、
あのドローンは⁉︎

​ちくしょう、
あれで全部
見られてたんだ!

​狙撃銃を
持ってこい!

​あの邪魔な“鳥”を
撃ち落とすんだ!

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​チッ、気付かれたか。

​今だぁ‼︎

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​や、やめろ!

​撃ってみろ!
こいつに当たっても
知らねぇぞ!

​くっ……。

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​ん?何だその杖は。
手品でも見せて
くれるのか?

​アビバベボ
バゲア!!!

​ぎゃあああ!!!

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​この……!

​はぐあああ……

​見事だ、
アリス。

​敵は大体
倒したはずだ。
多分残りは……

​ティラミス一人!
でも気をつけないと、
どこに潜んでるか……

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​どうやら私の仲間を
随分可愛がって
くれたようだな。

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​なかなか良い武器だが、
それで私を撃とうとは
思わん方がいいぞ。

​衝撃でうっかり
引き金を引いちまう
かもしれんからな。

​…………。

​さぁ、銃を捨てろ。
それからその妙な
モノクルもだ。

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​よしよし、
良い子だ。

​アーセニウス、
貴様に一つ
聞く事がある。

​オーブの中身だ。
あれは……
一体何だ?

​見たのか?
正常にデコードして
表示出来たか?

​画像だ。

​あれがオーブの全て
だと言うのか。
他には何も無いのか。

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​期待外れのもの
だったか?

​とんだ道化に
なった気分だよ。

​オーブを手に入れる
ために多大な労力……
リスクを冒したのに。

​危ない橋を
渡ったのは
私も同じだ。

​貴様のような
薄汚い武器商人と
一緒にするな!

​私たちの活動は
我らが同胞の
ためだった!

​武器商人……?

​……だが、それは
まぁいい。元より
危険な賭けだった。

​私たちは
他の方法を
探し続ける。

39ページ目

​あのオーブは
ザッハトルテに
返す。

​目撃者は
全員始末する。
痕跡は残さない。

​それでひとまず
私たちは元通りに
なれるだろう。

40ページ目

​あっ……

​こら、暴れるな!

​があっ‼︎

​この……‼︎

41ページ目

42ページ目

43ページ目

​よう、アリス。
奇遇だな……
いや、必然か。

​お前がこの事件を
諦めるはずはないと
思ってたぜ!

​ジョニー‼︎

44ページ目

​おっと。
動くんじゃねぇぞ、
アーセニウス!

​俺の狙撃の
腕は今ので
分かったろ。

​おかしな真似すると
今度はてめぇの頭を
吹っ飛ばすぞ!

​そんな……

​⁉︎

​今度は一体……?

45ページ目

​二階西側
通路に侵入!

​二階東側も
入りました!

​地上班も
突入開始せよ!

​行け行け行け!

​首都警察だ!
全員動くな!

46ページ目

​俺が一人で
来たとでも
思ったか?

​首都警察局の
特殊部隊が一緒さ。
誰も逃がさねぇぜ!

​大げさな奴だな。
わかったよ……
ほら、降参だ。

​うう……
ああ……

​ジェームズ
捜査官!

​お、丁度
良かった。

​お前らはそこの
犬を連行しろ。

​おー、元気そうだな。
この後もたっぷり可愛がって
やるから覚悟しとけよ!

​……。

​アリス、
怪我は?

​あ、いや
大丈夫。

47ページ目

​よし、アリス。
その泥棒に手錠を
掛けるんだ。

​手錠は
あるか?

​あ、あるよ。
でも……

​……アリス、私の前へ。
唇を読まれないよう、
奴の死角に入るんだ。

​………。

48ページ目

​この状況で私を
逮捕しなければ、
君が疑われるぞ。

​さぁ、早く。
あの男の言う
通りに……

​そ、そんな!
出来ないよ、
私は……

​……アリス、これ
以上君を巻き込む
わけにはいかない。

​君を悪党にはしたくない。
君は正義の警察官のまま
でいるんだ。

​でも、でも……
それじゃあなたが
どうなるか……

​ふっ、忘れたか?
私は手錠なんて
簡単に外せるんだ。

​なぁに……君に迷惑が
掛からない頃合いになったら
とっとと逃げ出すさ。

​……………。

49ページ目

​……あはっ。
全く、あなた
って人は。

​それじゃあ
逮捕する甲斐が
ないじゃん。

​……アーセニウス。

​窃盗の疑いで、
あなたを逮捕します。

50ページ目

​犯行グループの
犬10名を確保。

​ふぅ……

​全員が腕や脚を
撃たれ、重軽傷……
死亡者はありません。

51ページ目

​アーセニウスなんて
いなかったんだ。

​正体はあなた
自身だったん
だね。

​前にも
そう言った
じゃないか。

​あの時は
とても信じられ
なかったよ……

​その……年齢
から判断して。

​パジャマ姿
だったしな。

​博物館でオーブを
奪い去ったのも……
今ここにいるのも……

​全部あなた
なんだね?

​そう、
この私だ。

​初めから終わり
まで、私一人。

52ページ目

​あ、もしかして、
アレなのかな?
あなたは……

​ん?

53ページ目

​アーセニウスって
言うのは共通の
コードネームで……

​あなたはその
二代目……的な感じの
設定だったりする?

​ああ、まぁ
そんなところだ。

​ああ、くそっ!
そうだったのか!
先代がいたんだ。

​年齢の事も説明がつく!
どうしてこんな簡単な事に
気付かなかったんだろう。

​…………。

​……あ、あのさ。

​何だ?

​ちょ、ちょっと
気になって……
その……

​こんな質問を
するのはとても
失礼なんだけど……

54ページ目

​なんで私を助けて
くれたのかな……
ってさ。

​あのままオーブを
持って逃げる事だって
出来たはずなのに……

​なのに、あなたは
命懸けで戻って
きてくれた。

​……つ、つまり……
その……やっぱり、
もしかしたら……

​本当は……
あ、あ、あなたは
私の事を……

55ページ目

​……ああ、
もちろんだとも。

​ほ、ほ、本当に?

​君の事は大切な

​友達

​だと

​思ってるからね。

​アーセニウスは

​決して

​仲間

​を

​見捨てたりしない。

56ページ目

​……ア、アリス?

​どうした、
大丈夫か?

​い、いいや
……何でも
ないっす。

​は、はは……
そりゃそう
ですよねー。

​……でもね。

​私はまだ
諦めないよ。

​今は無理
でも……

​いつか……
友達以上の関係に
なれたらいいな。

57ページ目

​はっ……
私は泥棒だぞ。
盗みは私の専門だ。

​君のようなシロウトに
泥棒の心が盗めるかな。

​言ってくれるね……
だけど、私はあくまで
警察官なんだ。

​私なら、
“盗む”などという
言葉は使わない。

​ふうん?

​私は必ず貴様を
追い詰めてやる。

​貴様が地の果てまで
逃げようが……
どこまでも追い掛ける。

​そして何度でも
捕まえる。

58ページ目

​縛り上げて……
束縛して……

​鳥籠の中に
閉じ込めてやる。

​私なしには
生きていけなく
してみせる。

​だから覚悟
しておけ。

​国家権力を
ナメるなよ。

​……おお、こわ。
その日が来るのが
楽しみだ。

59ページ目

​よし、悪党どもを
全員連行するぞ。

​怪我人は救急車に
乗せ、それ以外は
護送車に……

​あ、あれが……
アーセニウス。

​アリス先輩が
逮捕したのか?

60ページ目

​おい、顔赤いぞ。
怪しまれる。

​うるさい!

61ページ目

​見て、渡り鳥だわ。
おかしいわね、
こんな時期に……

​西の国境に向かって
いるのだろう。

62ページ目

​きっと……
この国にいられ
なくなったのね。

​鳥族とて、地上の
動乱と無関係では
いられないか……

​あなたの作っている
「鳥」の様子はどう?

​ん?

​ああ……実は最近、
新しい暗号理論を
思いついたんだ。

​それを使って、
あのオーブの中の鳥に
データを隠す事にした。

​データを隠す?
一体何のデータを?

​それはね──

​──────

63ページ目

​まぁ、そんな事をして、
もし暗号が解読されたら
どうするの?

​あのオーブは
政府への献上品
なのよ。

​ははっ……
解読など不可能さ。
今の技術ではね。

​この暗号は……
暗号化するのは
簡単だが……

​復号に膨大な量の
計算が必要な仕組みに
なってるんだ。

​私の予想では、
あれを鍵なしで
解読するには……

​今の何万倍も高性能な
コンピュータを何億台も
集める必要があるだろう。

​何億台……

​それほどたくさんの
コンピュータが作られる時代が
いつか来るのかしら……。

64ページ目

​その頃になれば、
コンピュータは大企業や
専門機関だけでなく……

​個人個人が自由に使い、
ものを考えるための
道具となっているだろう。

​……私たちが
生きている間には
到底無理な話ね。

​将来、あの鷲の
秘密が明らかに
なる時……

​少しでも世の中が
良くなっている事を
祈るばかりだわ。

​……そういえば、
奇妙な学説を唱えた
生物学者がいてね。

​今の鳥類は、元々
恐竜から進化した
種族だというんだ。

​ふふ、それは
確かに奇妙な話ね。
本当かしら。

65ページ目

​  実は今回の作品のテーマに
「鳥」を提案したのはそれが
  きっかけなんだ。

​え、じゃあ
まさか……

​そう、あの鳥は鷲だと
上には説明したが……
あれは嘘だ。

​本当のモデルは……
その昔、恐竜の時代に
出現した最初の鳥類。

​この世界に進化という
現象が存在する事の証。

​始祖鳥だ。

66ページ目

​やあ、刑事さん。
また会ったね。

​事件を解決して
くれたそうだね、
ありがとう。

​ザッハトルテ卿。
お目にかけたいものが
あって参りました。

​ほう、それは
何ですか?

​ウルフォーゲルの
オーブと……
その中身です。

67ページ目

​これでしばらく
お待ちください。
徐々に画像が……

​おお……

​そうです、
これが中身……

68ページ目

​アルベルト・テロポダ博士と、
その恋人……

​ヨハンナ・ボーグン博士。
その写真です。

​ああ、彼女が
先生の……

​お姿を見るのは
初めてだ……。

​そうか、写真か……
破壊兵器などでは
なかったんだな。

69ページ目

​大量破壊兵器の
設計図……そんな
噂もありましたね。

​先生は生前に一度、
このオーブを俺に
見せてくれた。

​そしてこんな
事を言ったんだ。

​“このルビーには秘密の情報が
 隠してある。目には見えないし、
 触る事も出来ないけど──”

​“将来、技術が追いつき、
 その情報を取り出せるように
 なる日が必ず来る”……。

​博士は……それが
どんな情報なのか
言いましたか?

​“とても危険で……”

​“今の世の中の手には
 負えないものだ”……と。

70ページ目

​確かにこの写真は
二人にとって
致命的だ……

​これを誰かに見られでも
したら、二人とも収容所
送りになっていただろう。

​結局は……どちらも
長生きは出来なかった
わけだが………。

​俺は今まで……
先生に聞いた事を
誰にも話してない。

​オーブの存在が
どこから漏れたのか、
それは分からん。

​噂は噂を呼び……
尾ひれがどんどん
ついていった。

​そしていつの間にか、
色んな連中がオーブを
狙うようになっていた。

​くだらない噂だ……
でも、もし本当に兵器の
情報が入っていたら……

​そう考えると、私は
オーブを奪われるのが
恐ろしくなった。

71ページ目

​だが、ようやく肩の荷が
降りた。もう狙われる
事もないだろうが……

​これはまた金庫に
でも仕舞って
おくとしよう。

​……ところが、
そういうわけには
参りません。

​言ったでしょう、
私はこれを見せに
来ただけ。

​お返しに来た
わけではない。

​な……何だと⁉︎

​なぜなら、この
オーブはもう……

​この私、アーセニウスが
頂戴した物だからだ。

72ページ目

​ああ、警備員を
呼ぼうとしても
無駄だぞ。

​回線は切って
ある。

​……やられた。

​ザッハトルテ卿。
一つ質問する。

​あんたはこのオーブに
兵器が隠されている
可能性を恐れていた。

​あの男……
ティラミスの思惑にも
気付いていたはずだ。

​ああ。

​なぜ今になって
オーブを貸し出す
気になったんだ?

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​マイク・ティラミス……
彼は同胞思いだったが、
社会を憎んでもいた。

​そして力を欲していた。
彼もまた、この社会では
弱者だった。

​彼らが破壊兵器を
手にする事になった
としても……

​彼らなら、この腐った
世界をぶち壊しにして
くれるかも……

​それはそれで
良いと思った。

​……全く、あんたって男は
とんでもない大悪党だな。
おまけに悲観論者ときてる。

​ああ、野蛮な時代に
生まれ育った
あなたが可哀想だ!

​そして余生は暗い部屋に
閉じこもって過去を反芻
するだけ……!

74ページ目

​そうしている間にも
世界はどんどん新しく
なっているというのに。

75ページ目

​もう行くよ。そろそろ、
私の脱走に気付いた警察が
やってくる頃だろう。

​……アーセニウス君。
私にも一つ質問させて
くれるか。

​何だ?

​君はオーブの中身が何か……
最初から知っていたのかね?

​……何か凄い兵器が
入ってる、なんて話は
信じちゃいなかった。

76ページ目

​コンピュータ、
レーザー、人工ダイヤ、
その他あれこれ……

​あの場所にあったものは
何もかも、もう世の中に
出てしまってる。

​そして今では別物に
なってる。技術も人も
進歩するんだ。

​鳥籠の中に閉じ込めておける
オーバーテクノロジーなんて
あるわけない。

​青臭い小娘め……
そんな事を言ってられ
るのも今のうちだぞ。

​いずれお前も……
………ん?

77ページ目

​良い酒だ。あんたの
ような老いぼれには
もったいない。

​あとは私が
もらっておく
としよう。

78ページ目

​………ふっ。

79ページ目

​今ここに私が
来なかった⁉︎

​えっ、
えっ?

​バカ!そいつが
アーセニウスだ!

80ページ目

​もうここには
おりませんよ、
刑事さん。

​くそっ!
一歩遅かった!

​頃合いになったら
逃げ出すとは
言ってたけど……

​まさか護送中に
逃亡するなんて……

​……刑事さん。
泥棒、頑張って
捕まえて下さいね。

​…………。

81ページ目

​未確認情報ですが、
この屋敷に逃走中の
アーセニウスが……

​厳戒態勢を取れ、
周囲をくまなく
捜索するんだ。

​おい、誰か
テープを張れ!

​あーあ、全く……
お祭り騒ぎにしち
まいやがって。

82ページ目

​どうした、アリス。
女に逃げられたか?

​ジョニー。

​丁度良かった。
あんたにこれを返そうと
思って持ってたんだ。

​あっ……!
そ、そいつは
……‼

​発電所跡に
来い。
一人でな。

​俺の鳥だ。
もう見つからないと
思ってた……

83ページ目

​ありがとう。
本当に捕まえて
くれるなんて……

​約束だった
からね。

​…………。

​ジョニー、
どうかしたの?

​……せっかく
捕まえてくれたのに
悪いんだが……

​この鳥、もう
逃してやろうと
思うんだ。

​ハアッ⁉︎

​今更何言ってんの?
あんた、あんなに必死に
探してたじゃ……

​あれ以来、こいつは
一人で生き延びて
こられたんだ。

​もう俺が餌やる
必要なんか
ねぇよ……

​俺の秘密が漏れる心配も
なさそうだ。誰かが別の
台詞を吹き込んだんだな。

​ウルフォーゲルの
オーブを持って……

84ページ目

​それに、こいつは
もう大空を……

​自由の味ってやつを
知っちまってる。

​それを今更、狭い檻に
戻すなんて……

​可哀想だよ
なぁ……。

​…………

​ダメ!
逃すなんて。

85ページ目

​アリス、
なぜだ?

​自由の味?
檻が可哀想?
そんなの勝手な理屈。

​一度飼い始めたペットは
最後まで責任を持って
飼いなさい!

​何が“自由の鳥”だ。

​そんなもん、
クソ食らえ!

​アーセニウス!
ここに居たお前の
仲間は……

​俺達が預かっている。
彼女に死んでほしく
なければ……

86ページ目

​なぁ、
ところで……

​この鳥が言ってる
「仲間」って一体
誰の事なんだ?

​……

​考え中

​アリス?

​あ、ああ、
それはね……

​私の事。

​実はあんたに
黙ってたけど……

​私は潜入捜査で
アーセニウス一味の
一人に接触したんだ。

​犬たちには私も
仲間だと思われ
たみたい……

​それであんな
メッセージを残し
たんだと思う。

87ページ目

​潜入捜査ね……
なるほど。

​そりゃうまく
やったもんだ
な?

​ま、まぁね。
うまくいった。

​……………。

​……………。

​随分勝手な
真似をして
くれたなぁ。

​潜入捜査だ?
ふざけるん
じゃねぇぞ。

88ページ目

​お前には後で
聞きたい事が
色々ある。

​本当に問題のない
“捜査”だったのかも
含めてな。

​……待ちな、
ジョニー。

​そういうあんたの
行動に問題は
無かったと言える?

​あったら教えて
もらいたいね。

​あんた、本当は
五課じゃなくて六課の
捜査官なんでしょ。

​何……?

​今、何て言った?

89ページ目

​前回、二人で
この屋敷に来た時……

​ジョニー君と私は
古い馴染みでね。

​この件は内々に
済ませたかった
のだが……

​……なんて言っていた
ザッハトルテの経歴は
元・外務大臣。

​六課こと秘密情報局は
外務省系……

​あんたが所属してる事に
なってる五課こと保安局は
内務省系の組織。

​元外相が五課にコネが
あるのは変だし、“内々に”
って表現もおかしい。

​おかしくねぇよ!
そんなのはお前の
主観だろう。

90ページ目

​その後、六課の
アレックス博士に
会いに行った時も……

​保安局捜査官の
ジョニー・ジェームズ。

​博士は“顔見知り”と
言ってたのに、なぜ
あんな自己紹介を?

​あれは博士の口から
自分の正体がバレない
ように……

​とっさに偽りの
身分を説明した
んじゃない?

​………。

​あ、そうそう……
内務省には五課以外にも
もう一つ組織があった。

​「警察」だ。

​同じ内務省同士、
五課と警察は協力
関係にある……

​五課の捜査官なら、
警察の現場に紛れ込んでも
そんなに不自然じゃない。

91ページ目

​あんたは当初、
警察に疑いを
持っていた……

​警察を探るために
急遽、五課のフリを
する事にしたんだ。

​どう?
違う?

​…………。

​六課の捜査官が五課の
身分証を偽装して警察を
嗅ぎ回っていた……

​関係者は良い気が
しないと思うよ、
特に内務省はね。

​む、むぐぐ……

​……わ、わかった、
わかったよ。
おっかねぇ女だな。

​お互い余計な
詮索はしない
って事で、な?

​……そう願う。

92ページ目

​ああ、そこの君……
アリス・シャーロック
巡査部長だったかな?

​あ、あなたは
確か……

​グレッグ警部刑事だ。
一度会ったよな、
あの博物館で……

93ページ目

​ジョニーが
「デコスケ」と
呼んでた人だな。

​ジョニー君に
付き合って刑事役を
してあげたそうだね。

​それと……
アーセニウスの逮捕、
でかしたぞ!

​警部、大変申し訳
ないのですが……

​アーセニウスは
護送中に逃亡して
しまいました。

​いやいや、それは
君の責任ではない。
護送車の連中のだ。

​一度逮捕出来ただけで
十分お手柄だよ。

​知っての通り、
奴は世界的に有名な
泥棒だが……

​今まで一度も
逮捕された事は
なかったのだ。

94ページ目

​君は奴を逮捕した。
これは世界初の
快挙なんだよ。

​世界初!

​は、はあ。

​なあに、逃げたものは
また捕まえればいい。

​そこで相談
なんだが……

​アリス君、役ではなく
本当に刑事になる気は
ないかね?

​えっ⁉︎

95ページ目

​そう、本物の刑事に
なって事件を解決
するのだ。

​そしてアーセニウスが
再びこの国に
やってきた時には……

​君を捜査担当に任命しよう!
世界で唯一アーセニウスを
逮捕した刑事が奴を追うのだ。

​これは我々
首都警察局としても
大きなアピールになる。

​わ、私が……

​刑事に……?

​あー、もちろん
君には先に言って
おくが……

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​刑事の仕事は
生やさしいもの
ではないぞ。

​単なる制服警官で
いるのとはわけが
違う。

​これまで以上に
様々な困難に
直面するだろう。

​場合によっては
非常に危険な目に
遭うかもしれない。

​だが、やりがいのある
立派な仕事でもある。

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​どうだ、
やってくれるか?

98ページ目

​はい‼︎

​ALICE SHERLOCK: THE RUBIOUS NEBULA

​THE END