全12話予定 R-15 

フェリスマンの国

連載途中のエピソード (19 / 50 ページ完成)

第3話 呪われた種族

1ページ目

(1コマ目:深夜の王都の官庁街。規則正しく並んだ建物の窓から漏れる光はまばらで、通りには人影は見えない。)

第3話

呪われた種族

(2コマ目:ベッドに仰向けに横たわり眠っているサンドラ。はーはーと苦しそうに息をする総理のその頬は紅潮し、目には相変わらず涙を浮かべているも、さっきよりは表情は安らかそうになっている。。)

(3コマ目:カーテンを締め切り、テーブルランプが一つだけ灯った薄暗い寝室の中、ベッドの傍で、椅子に座って俯きながら難しい顔をしている警備部長。)

(4コマ目:コンコン、という音に顔を上げるナオミ。)

2ページ目

(1コマ目:ナオミがドアを開くと、いつも総理の傍にいるとぼけた顔の人猫が、汗をかいて心配そうな表情をしながら立っていた。)

官房長官。

遅くなった。
様子はどうだい?

(2コマ目:廊下に一歩出て説明をするナオミと、それを静かに聞く官房長官。)

……それでひとまず寝室に
お運びして…今はもう落ち
着かれたようなんですが…

そうか…

(3コマ目:寝室のドアに近づき、中を覗き見る官房長官。その発言に思わず怪訝な表情になるナオミ。)

怪我はして
ないね?

怪我……。

…い、いえ。
ないと思います
が……。

(4コマ目:室内で相変わらず寝ているサンドラの様子を眺める官房長官と、その背後に立つナオミ。)

ああ、良かった。

……。

(5コマ目:身体の向きを変えないまま、気まずそうに視線を落とす官房長官。)

君にはこの際だから
言っておかなければ
ならないが、その…
サンドラは……

3ページ目

(1コマ目:官房長官の背中に、難しい表情でうつむきながら話しかけるナオミ。)

左腕にある
切創痕のこと
ですか?

(2コマ目:振り返る官房長官。ナオミは顔を背け、その場を離れようとする。)

気付いて
たのか。

偶然見ただけです。
さっき、袖が
めくれたときに。

(3コマ目:目を閉じ、苦渋の表情を浮かべる官房長官。)

あいつは
ああ見えて
危なっかしい
やつでさ…

見守って…
やってくれ
ないか。

(4コマ目:ナオミは思わず顔に手を当て、つらそうな顔になる。その後ろから人猫が追いすがってくる。)

嫌です!
私はただの警備の
騎士ですよ。

問題を抱えた方の
面倒なんて
見切れません!

君に多くは
求めないよ!

4ページ目

(1コマ目:真剣な顔で懇願する官房長官。)

身体の怪我だけでも
しないように
目を配ってくれれば
それでいい。

頼むよ。
身辺警護の一環
だと思って。

(2コマ目:立ち止まり、後ろを振り向きかける悲しそうなナオミと、その後ろで悲痛な表情をしている官房長官。)

………

僕が付きっ切りで
そばにいるわけには
いかないから……

(3コマ目:棒立ちのナオミの横を、頭を抱えた官房長官がすれ違い、寝室から遠ざかっていく。)

はぁ…きっと仕事の
重圧のせいだろうな。
時々爆発するんだ。

せめて何か気晴らしに
なることでもあれば
いいんだけど……

気晴らし…

(4コマ目:ナオミが声を掛けると、官房長官が振り返る。)

…失礼ですが、
随分総理を気に
掛けるんですね。

総理の健康状態
にもお詳しい
ようですし…

(5コマ目:真っ暗な空の下の総理大臣官邸。)

……友達
だからね。

5ページ目

(1コマ目:再びそこは寂寞とした大地。三日月の光の中、人間の子供の姿になった茶ブチの人猫が疾走している。)

(2コマ目:爽快な笑顔で走り続ける人間の子供。)

ああ、
身体が軽い!

どこまででも
走っていける!

(3コマ目:そのままタッとジャンプし、小島から小島に飛び移る子供。)

(4コマ目:ザザッと音を立てて対岸に着地すると、足元に砂埃が舞う。)

(5コマ目:姿勢を直す子供の足元。)

この感覚…

6ページ目

(1コマ目:右の握り拳を笑顔で見つめる少年。)

これが僕の身体…
僕の手だ。

(2コマ目:そしてまた右手を開く。)

初めからこの姿
だったかのように
しっくりくる。

(3コマ目:真っ暗な空の下、月明かりに照らされた少年は自分の手を仰ぎ見ながら、まるで踊るようにくるくると舞っている。)

まるで生まれ
変わったような
爽快な気分だ。

いいや、僕は
今日ここで初めて
生まれたんだ。

(4コマ目:絵のないコマ)

どうして今まで
気付かなかった
んだろう。

(5コマ目:満面の笑みで両手を高く掲げる人間の子供。)

今までの
僕は…

偽りの
僕だった!

7ページ目

(1コマ目:少年の後ろの方から、再びあの謎めいた声がする。)

今のうちさ。

(2コマ目:その声に振り返る少年。)

…え?

(3コマ目:少年の眼前には、すでに水平線の向こうから姿を現し、あたりを明るく照らし始めた太陽があった。)

夜が明けたら…

…また元通り。

(4コマ目:少年の右手の甲の体表に、泡のような膨らみが突如現れ、ピキッと音を立てる。)

8ページ目

(1コマ目:ミシミシと言いながら膨らむ泡。不安に駆られた少年は思わず左手で右手を掴む。)

な、何だ⁉︎
身体が…

(2コマ目:ボコッ、ボコボコ、と音が鳴り、今度は首の後ろの皮膚までもが泡のように膨らみ始める。)

(3コマ目:驚嘆の表情を浮かべる少年。泡のような部分はどんどん広がり、首の前から耳の後ろ、左手にまで発生している。)

(4コマ目:ああ、ああ、と苦しそうに呻きながら膝と手を付く。泡は両手首と顔の側面を覆い尽くし、額に達した泡が髪の毛を押し退け始める。)

(5コマ目:ボタボタと地面に落下するのは、大量の髪の毛の束だった。)

9ページ目

(1コマ目:泡状の膨らみはもはや全身に広がり、ボコボコと不快な音を立てて膨らんでいる。少年が纏っていた服ははちきれ、ビリビリと破けていく。)

(2コマ目:苦しそうな少年の顔。頭に広がる泡が頭髪をどんどん抜け落とさせる。その泡は、よく見るとふわふわとした毛の塊で、茶色いブチ模様も付いている。)

(3コマ目:頭のてっぺんを覆い尽くした体毛の泡の一部が三角形に盛り上がり、猫の耳の形となった。)

(4コマ目:膝を付いた姿勢で天を仰ぎ、ぎゃあああ!と絶叫する少年。服は破け、地面には大量の髪の毛が散らばり、少年の身体はもはや顔の一部を残し、ほとんど全身が体毛の泡に覆われ、人猫の姿へと変じている。)

10ページ目

(1コマ目:ああっ、と叫び声を上げながら汗だくで飛び起きる大人の姿の茶ブチの猫。)

(2コマ目:そこは早朝の自宅の寝室だった。はあはあと息を荒げている中、妻は静かに眠っている。)

(3コマ目:カーテンが半開きになった窓。屋外はまだ薄暗く、淡い光が差し込んでいる。)

ああ、
夢……か。

(4コマ目:早朝の官邸の外観。)

(5コマ目:総理の寝室の中、ベッドの傍で椅子に座り、腕を組んでいるナオミ。)

(6コマ目:うつらうつらと頭が揺れる。その顔には疲労の色が浮かび、目は閉じられている。)

(7コマ目:座ったままのナオミの横からスッと近づいてくるサンドラの後ろ姿。)

11ページ目

(1コマ目:突如、ナオミの左頬に勢いよくウサギのぬいぐるみが叩き付けられる。)

(2コマ目:そのままの勢いで床に倒れこむナオミ。)

あぐっ!

(3コマ目:ナオミが見上げると、そこにはウサギを抱えたままゼエゼエと肩で息をする、赤い顔のサンドラがこちらを見下ろしていた。)

総理…

(4コマ目:真っ赤な顔で叫ぶサンドラ。)

私の部屋
から…

出てけ‼︎

(5コマ目:わけがわからずキョトンとした顔のまま、ポイと寝室から廊下に投げ出されるナオミ。)

12ページ目

(1コマ目:頭のてっぺんから蒸気を発しながら肩を怒らせ、ダン、ダンと大きな音を立てながら廊下を歩くナオミ。その後ろにはいつもの朗らかな笑顔を浮かべる事務員の人間もいる。)

なんだ畜生!
人がせっかく
心配して……

むかつく!
むかつく!
むかつく!

あ、おはよう
ございます。

(2コマ目:明るい朝の日差しの中の官邸。)

(3コマ目:二つの大きな人猫の手のアップ。)

(4コマ目:自分の両手を見つめていたのは、茶ブチの人猫だった。制服に斧を背負った青年は、ロッカールームのようなところでベンチに腰掛けている。)

…………。

(5コマ目:ドスッという重い音。白色で眼光の鋭い人猫が後ろからやってきて、茶ブチの人猫の背中を叩いたのだ。)

おっす!

(6コマ目:同僚を見下ろす白い人猫と、ベンチに座ったまま後ろを振り返る茶ブチ。)

どうした、
しけた顔して。

な、何でも
ねぇよ。

13ページ目

(1コマ目:笑顔で話し続ける白い人猫と、それにつられて明るい表情になる茶ブチ。)

この後どうせ
暇だろ?
付き合えよ。

あ、ああ。
いいけど。

(2コマ目:夜の王都の街並み。真っ暗な空の下、建物は様々な明かりに照らされ、賑やかな印象だ。)

(3コマ目:人通りの多い道を、六人ほどの騎士が歩いている。)

(4コマ目:ガヤガヤと話しながら歩くのは、白、茶ブチの人猫と、その同僚たちだった。)

あっ、
あそこに
いるの…

(5コマ目:明るい夜の繁華街の人混みの中に、ナオミの後ろ姿があった。)

警備部長!

14ページ目

(1コマ目:道端で話す人猫の騎士たちとナオミ。)

珍しいですね。
これから
飲みですか?

まぁな。
お前らもか。

(2コマ目:途端に不機嫌そうな顔になり、上司を睨む茶ブチの人猫。しかし、それ以外の騎士たちはにこやかな笑顔を向けている。)

………。

良かったら
俺たちに一杯
奢ってください!

(3コマ目:少し呆れた顔で部下たちを一瞥し、再び歩き出すナオミ。)

うわっ、
図々しい…
一杯だけだぞ。

(4コマ目:後ろでワーイと歓声を上げた部下たちを横目に見ながら、やれやれといった感じで笑みを浮かべるナオミ。)

みんな、
警備部長に
続け!

(5コマ目:パブと書かれた丸い看板。)

(6コマ目:ギイーと音を立てて扉を開き、店内に入ってきたナオミ。そこでは平服を着た大勢の人猫たちが、各々ジョッキを片手に談笑していた。)

15ページ目

(1コマ目:店内に足を踏み入れたナオミを、壁際に座った二人の酔っ払った人猫が見つめながらヘラヘラ下品な笑みを浮かべる。)

見ろよあれ。
騎士のコスプレした
人間がいるぞ。

あっはっは。

(2コマ目:はてな、と酔っ払いに目を向けるナオミ。その後ろにゾロゾロと人猫の騎士たちが続いて来たのを見て、酔っ払いは思わずギョッとする。)

…うぇ⁉︎

(3コマ目:酒場のカウンターの中から、エプロン姿の店員の人猫が明るく声を掛ける。)

いらっしゃい、
お騎士さん方!
何にします?

(4コマ目:一斉に大声で注文を叫ぶ人猫の騎士たちと、その声に少し呆れ顔になりながら財布に手を伸ばす上司。)

マタタビビール‼︎

……私は
リンゴ酒を。

(5コマ目:机に並べられたジョッキに、たっぷりと注がれたビール。)

(6コマ目:丸テーブルに腰掛けた四人の人猫の騎士たち。真ん中で頭を抱え、テーブルに顎を付いた茶ブチの人猫を、他の三人が心配そうに見つめる。)

なぁ、最近
なんかあった
のか?

良かったら
話してみろよ。
相談に乗るぜ。

16ページ目

(1コマ目:しょんぼりした顔でジョッキを片手に語り出す茶ブチと、その右手に座り受け答える黒い人猫。)

…馬鹿な話
なんだけどよ。

最近、よく
悪夢を見るんだ。

悪夢?

(2コマ目:冷や汗を流し、怖い顔になる茶ブチの横顔。)

そ、その夢で、
お、思ったんだ。

も、もしかしたら
俺、本当は人間なの
かもしれないって…

(3コマ目:お互いに顔を見合わせる黒、白、ハチワレの三人。)

………。

(4コマ目:回答する黒と、それを聞いて思わず椅子から立ち上がる茶ブチ。)

…当ててやろうか。
その夢の中で
人間の子供に
出会ったんだろ。

ほんで自分の身体が
人間になったり
人猫になったり…

な、なんで
分かるんだ⁉︎

17ページ目

(1コマ目:少し暗い顔になる白とハチワレに対し、ゆっくりと腰を下ろす茶ブチ。)

…そう言や
お前、田舎育ちで
学校も出てないん
だっけ。

街の子供は
学校で習う
ことだから…

なに?

(2コマ目:絵のないコマ)

俺たち人猫はな…
みんな元々は
人間だったんだよ。

(3コマ目:不安げな表情に戻り、白に視線を合わせる茶ブチ。)

「魔王の呪い」だろ?
それくらいは知ってる。
人間の半数が人猫に
成り代わったって…

でも、それは
200年前の話だろ。
今の俺らには関係
ないはずじゃ…

(4コマ目:説明を続ける白。)

そうじゃ
ないんだ…
まぁ聞けよ。

(5コマ目:テーブルに置かれたジョッキ。)

人類の二種族……
人猫と人間はどちらも
人間の腹から生まれて
くるわけだが…

(6コマ目:ジョッキの中身の液体は、ぶくぶくと細かい泡を立てている。)

赤ん坊が母親の
腹の中にいる間は
種族の区別なんかない。
全員人間なんだ。

18ページ目

(1コマ目:驚いた顔のまま固まっている茶ブチ。)

赤ん坊は……
みんな人間…?

(2コマ目:少ししょぼくれた顔の黒と、淡々と説明を続ける白。)

けれど変化
するんだ。

人間の赤ん坊のうち
半数は生まれる前に人猫になり、
残りは人間のまま生まれてくる。

(3コマ目:白の手元のアップ。)

でも、
変化するのは
身体だけだ。

姿形は変わっても、
俺たちは人間の魂を
持っている。

(4コマ目:説明を続ける白の身体に、人間の腕がオーバーラップする。)

俺たちは心の奥底では
本来の身体を覚えていて、
それが夢に現れる……
と言われているんだ。

(5コマ目:再びテーブルを囲む四人のロングショット。深刻そうに顔をうなだれる茶ブチに、黒と白の二人が声をかける。)

みんな……
みんな同じような
夢を見るのか。

大抵は成長期に
見るらしいけど…

身体違和が急速に
大きくなるのが
成長期だからな。

19ページ目

(1コマ目:無表情のハチワレの横で、明るい笑顔を見せる白。)

時期に個人差は
あるんだな。

大丈夫!
そのうち慣れるし、
悪夢も見なくなる。

(2コマ目:片手に持ったジョッキに視線を落とす茶ブチ。)

魔王は200年前に
消えたわけじゃ
ないんだな。

(3コマ目:酒場の天井。むき出しの梁に取り付けられた小ぶりの照明が店内を明るく照らしている。)

封印されただけだ。
魔王は今もどこかで
生きている。

そしてこの世界に
呪いを振り撒き
続けている。

…………。

(4コマ目:得意な顔になる黒。)

でも「魔王の呪い」も
悪いことばかりじゃ
ないぞ。

(5コマ目:こちらを見つめながら左手を振り上げて見せる白と、相変わらず無表情のハチワレ。)

この呪いのおかげで
俺たちの身体は
人間よりもずっと大きく…
そして強くなった。

ああ、全くだ。

連載途中のエピソード (19 / 50 ページ完成)

第3話 呪われた種族
最終更新: 4月24日
完成率: 38%
直近の平均執筆速度: 2.5日/ページ
残りページ数: 31ページ
完成予想日: 7月9日ごろ
Episode 3: The Cursed Specie
Last updated: 24th April
Progress: 38%
Recent average making speed: 2.5 days/page
Remaining pages: 31 pages
Estimated completion date: Around 9th July